毎日、毎日、毎日、新しい技術やサービスが誕生している(背後では何かが消え去っている)。
人工知能あたりは、関連するニュースがない日を探すほうが難しい。世に初めて現れた発明もあれば、新星のようなものもある。それまで暗かった星がたった数日で数万倍の明るさになり、新しく星が生まれたかのように見える。ところがだんだん暗くなって、元に戻る。急に集めた注目は、目新しさが乏しくなるにつれ、無数の星の中に埋もれていく。
星の数ほどのニュースやソーシャルメディアの投稿に、条件反射のように目を奪われては、ひとつひとつの現象に一喜一憂する。ニュースや人の噂はもっともらしく聞こえても、実体のすべてではないし、へたしたらまるで違うことすらある。
個々の技術、サービス、情報、現象。それらがひとつの点だとすれば、点の外には無数の点がある。全体があることに考えが及ばず、目についた点だけを単体で見ていると、たったひとつの点に、いとも簡単に振り回される。点の本当の姿をつかめず、全景を誤解しかねない。
ビットコインが暴騰すると、核心はよくわからないまま投機対象として興味を持つ。暴落すれば、失望してむやみに叩いて終わる。ビットコインという点ひとつとってもぼやけたままだし、周辺の点にすら目がいかない。ほかのコインとの差異、暗号通貨の構造、ブロックチェーン技術、仮想通貨と電子マネーや貨幣の関係。資本主義の行く末、そもそもお金とは何か。点と点が結びついて集合、立体化する。立体から点をとらえた時に、点の本質が露わになる。ビットコイン単体をなぞるだけでは、真の正体はつかめないのだ。
多くの技術が指数関数的に高度化し、産物も増加の一途をたどる。点の数が増えれば増えるほど、全景は複雑になる。この流れにおいて、特定の点の洞察力とともに、点と点を接続する力、つなげた点から全景を想像する力を磨く必要がある。
点はいま、目の前にあるものだけではない。過去にも未来にも存在し、過去の点が、いまや未来の点とつながった時に、過去が確かにあったことも証明される。未来の点と、いまや過去の点を接続する力が加われば、ストーリーの可能性を拡張し、ひとつひとつの点の存在意義もより大きくなる。
点と点の相関性、文脈を探り、ストーリーを描く。ストーリーが出来上がって、ようやく点が意味をなす。
技術的特異点でさえ、ひとつの点だ。点と点の接続力、つなげた点でストーリーを描く想像力は、人間特有の力である。その力を駆使して、温かいストーリー、生き心地のよい世界を描いてみる。温かいストーリーの要素となることで、冷たい機械的な点にだって温かさが宿る。
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