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ほんとうのはなし。

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民話とは、暮らしの中から生まれ、語り伝えられてきた説話のことだ。昔話や恋愛話や失敗談。心温まる話だけれど、思い返すと、しんみりとした気持ちになるものが多い。『あいたくてききたくて旅にでる』は、岐阜県高山市出身で宮城県在住の民話探索者・小野和子さんが、50年の長きにわたり、東北地方の村々を訪ね歩き採訪した民話17編を、編集者の清水チナツさんが、ていねいにまとめた一冊だ。誰に聞かせるわけでもなく、ぽろりと口をついて出てきた民話を巡る数々の物語は、命の循環にも似た尊さを感じさせる。舞い落ちた枯れ葉が、微生物によって長い時間をかけて分解され、発酵することで、さまざまな生命を育む温かくフカフカな腐葉土へと変化するのと同じように、民話も多くの命を育む温かくて豊かな世界の中にある。
 
土地とともに生き、子々孫々を想い、ちいさな苗木から森を育てたかつての人々の営みは、僕らが目指す持続可能な未来の姿と少なからず重なる。未来を考えるためには今を知る必要があり、今を知るためには過去から学ぶ必要がある。一見すると取るに足らない小さな世界の中にこそ、僕らにとって必要なものが隠れている気がしてならない。民話は未来へとつながる”過去からの贈り物“だ。

『あいたくてききたくて旅にでる』

小野和子著、PUMPQUAKES刊
text by Keiichi Asakura
朝倉圭一(あさくら・けいいち)●1984年生まれ、岐阜県高山市出身。民藝の器と私設図書館『やわい屋』店主。移築した古民家で器を売りながら本を読んで暮らしている。「Podcast」にて「ちぐはぐ学入門」を配信。
記事は雑誌ソトコト2022年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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