千葉県館山市にある波左間地区に、ダイビングサービスを行う波左間海中公園がある。海底には世界唯一の海底神社があり、神事も行われているという。いつ、誰が、何のために作った神社なのか、作った本人に直接話を聞いてみた。
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ジンベエザメやザトウクジラも訪れる、波左間海中公園
波左間海中公園は、定置網に迷い込んだジンベエザメやザトウクジラなどを保護することがあり、ダイバーたちは一緒に泳ぐこともできるという。今までここを訪れた迷子の中には、メガマウスやマンボウも。東京から車で2時間ほどの場所に、変化に富んだ多くのポイントがあり、さまざまな生き物たちと出会えるのが波左間海中公園の魅力なのだ。
1982年に波左間海中公園を開業したのは、荒川寛幸(あらかわひろゆき)代表。83歳の現在も、現役ダイバーとして活躍している。波左間の海の魅力を、「半島の奥にある静かで穏やかな海」と荒川代表は言う。
なぜ海底に神社があるのか?
荒川代表「20数年前、メキシコかどこかでキリスト像が水の中で浮かんでいる映像を見て、自分たちも海の中で何かできないかと考えた。みんなで、鳥居にしようかと。鳥居だけじゃ、神社がなきゃおかしいだろ? それで、ここの組合長と一緒に洲崎神社へ頼みに行ったのが始まりです」
洲崎神社(すのさきじんじゃ)は、波左間海中公園と同じ波左間地区にある神社。東京湾を見下す場所にあり、航海安全、豊漁などの御神徳がある。洲崎神社協力のもと、仲間と海底神社作りについて半年かけて計画し、荒川代表が2カ月ほどかけてステンレスの鳥居と神社を製作。鳥居は縦横4メートルあるという。それらを1週間かけて海底に設置したのだとか。
海底神社建立から25年続く初詣
1996年に神社を建立してから、毎月1日と15日に榊と米を持ってお供えしている荒川代表。ボートで15分の場所で海に入り、18メートル潜ったポイントにある神社にお供えをする。海がしけた日は翌日に行い、欠かさずに続けている。それは初詣も同じだと荒川代表。
荒川代表「12月31日の夜中、2~5分前に潜るわけ。1時1分になって上にあがれば、初詣と潜り納めができるでしょ? そういう方法をとってるから、夜中に潜ってる。厳正されたダイバーだけ一緒に行って。5~6人かな。そんなに船に乗れないし、危ないから」
海底神社での初詣について話していると、年越し番組「ゆく年くる年」でも放送されたという。
荒川代表「今から12年前かな。潜る人は40人に決めて、みんなが鳥居の下で並んでね。12時と同時に鳥居をくぐって神社まで行ってお参りするっていう光景をやった」
新年早々海底神社にお参りする映像を見た人は、驚いたに違いない。
取材に訪れた12月、年に一度の掃除のために、鳥居のしめ縄が陸に上げられていた。10メートル以上あるこのしめ縄は、14年前に20人で3日かけて編んでくれたものだという。いろいろな人が協力し合って作られた、世界唯一の海底神社。初潜りに訪れてみてはいかが?
波左間海中公園:千葉県館山市波左間1012
http://hsmop.web.fc2.com/index.html
写真:波左間海中公園、水中写真家 伊藤亮平、アドレナリンダイバーズ 永野治、鍋田ゆかり
文:鍋田ゆかり
取材協力:波左間海中公園