住み続けたい街ランキング1位の富山市に移住して14年の先輩に聞く、最初の数年間

住み続けたい街ランキング1位の富山市に移住して14年の先輩に聞く、最初の数年間

地方へ移住するきっかけは人それぞれ。森田さんの場合は、夫の単身赴任がそのはじまりでした。今では富山県でエコツーリズムの旅や体験プログラムを企画・運営・催行する株式会社エコロの森代表となった森田由樹子さんの「はじまりの物語」です。

単身赴任していた夫が言うんです。「富山に家を建てたくなった」って


▲エコロの森代表の森田由樹子さん
▲エコロの森代表の森田由樹子さん(写真提供:森田由樹子)

かつて森田さんは、全国紙の記者として働くバリバリのキャリアウーマンでした。記者職の夫と社内結婚して双子の男の子が生まれ、ご自身は夜勤のないセクションに異動。それでも忙しいのがワーママ。夫妻は「となりの部屋がちょうど空室になったよ」と森田さんの夫の両親を呼び寄せ、モロにスープの冷めない距離に暮らすようになりました。双子の育児には万全の体制です。
ある年、夫は富山県に単身赴任。そして、
「家を建てたくなっちゃったんだけど、いっそ富山で建てない?」


それなりに悩んで、決めました。数か月くらい。


エコロの森スノーシュー体験
▲エコロの森開業から人気のスノーシュー体験(写真提供:森田由樹子)


森田さん「確かに、東京では、自分ら家族と義父母と、2軒分の賃貸家賃を払っていましたから、ちょっと不経済だったんです」しかし、富山なら広くて安い!
森田さん「でも、仕事は?どうするのって、思いますよね! 地方で記者業ができる媒体は限られているし。まあそれなりに悩みましたよ」
当時森田さんは44歳。子育てをしつつも女性として、今後キャリアアップもしていきたいと思っていました。それに、小学生の双子のために、じいじばあばも近所に呼び寄せたのに。
一方で、森田さんは「いつか起業もありかな」、と興味を持っていました。
森田さん「子どもが生まれてから異動した部署では、多くの起業家の方にインタビューしたり、キャリアについての記事を書いてきましたので、いつかは独立するのもいいかなあ、と、漠然とは思っていました。それに、年齢的にも転職が難しいことはわかっていましたし」
じゃあ、独立しよう。このまま会社にいて、定年になってから起業するより、今起業して社長になっちゃおう、と森田さんは決断します。
普通はそれがなかなかできなくて、あれこれ悩んでしまうのですが。。。
実は森田さん、読者を集めて女性のための交流・体験ツアーの企画提案などにも、携わってきていました。観光ツアーは地方の活性化になる、旅に行く側にとっても、旅に来られた側にとっても、効果があることを実感していたのです。子どもが生まれたことで視点が広がるのは、誰しも経験があることだと思いますが、森田さんもそのひとり。エコや環境、自然体験についても以前にまして興味を抱いており、もとより旅好きだったこともあり、次第に目標が固まりました。そうと決まればじじばば、双子と三世帯で移住&起業です! 双子もキリよく中学校に進学するタイミング。聞けば、義父母ももともと富山出身ということで、「2006年の4月には有給消化に入って、45歳の誕生日になった瞬間に退職しました。会社の早期退職の割増制度も、しっかり活用できました」


リアル友達ゼロからのスタート


▲立山室堂ツアーの様子


人気のツアー


富山県には、県と経済界が協力運営する「とやま起業未来塾」という勉強会があり、森田さんはその2期生にあたります。
森田さん「ちょうど『とやま起業未来塾』が始まったばかりだったんです。これはいいと。在職中にエントリーして合格し、6月開講のとやま起業未来塾2期生に間に合いました。もともとパソコン通信の頃からパソコンを利用していて、ブログ友達は富山にいたことはいたんです。でも、リアル友達はゼロ。子どもたちは中学校なので、ママ友はそうできないし。とやま起業未来塾は、起業のコンセプト固めと友人づくりに役立ちました」。
自ら動いて、最善の居場所を見出した森田さんの行動力は、とても参考になります。


最初の2年間は遊んだり知り合ったり。塾に通ううち、森田さんがやりたかったことはますます具体的に。当時、富山を訪れた人に対する「着地型の旅の提案」は競合会社もありませんでした。360万円で登録可能な第3種旅行業は、2007年にタイミングよく制度改正があり、企画旅行パッケージ提案も可能になっていました。
「とやま起業未来塾」の受講終了後、勉強をして、2007年の冬には旅行業務取扱管理者の資格も取得。森田さんは移住して2年後、2008年2月に第3種旅行業者としてエコロの森を開業します。
その間、資格の勉強、双子の子育て、義父母との同居でたくさんの苦労もあったはずです。
森田さん「さらっとじゃないですよ、もちろん。大変でした。でも、子どもらはサッカーを通じて富山になじんだし、いつの間にか富山弁を使うようになっていました。移住から起業までの2年間、色々な人と出会って、こんなことを始めるよ、と口で伝え続けていました」
リアル友達ゼロからのスタートでしたが、森田さんはその行動力と明るさで、人脈を広げていきました。
森田さん「開業後は、町や商工会議所の仕事などもだんだんと増えていきました。本当に忙しくなったのは2012〜13年ごろですね」


今、またやりたいことがあるんです。


▼記者も参加した秋のきのこ狩ツアー
▲記者も参加した、秋のきのこ狩ツアー。なめこがたくさん!(写真・田原朋子)


エコロの森では、スノーシュー体験、立山撮影ツアー、きのこ狩り体験、なれずしづくりなど、富山の四季にあった楽しい体験企画をたくさん提案しています。ほとんどが日帰りでできる、小さいけれども特別な旅。県外からだけではなく、県内の人でも楽しめる企画がたくさんあります。
とはいえ、コロナ禍で旅行業は大変な状況のはず。それでも、森田さんはこれからやりたいプランをそっと教えてくれた。
森田さん
「エコロの森もやりつつ、カフェや、小料理屋の女将とかね。自分で出版社をつくって、本を出したりというのも面白そうだな、と考えています。富山はスモールビジネスをするにはちょうどいい町かもしれないですよ」
移住から14年。インタビューをしていたレストランでも、「こんにちは」と知り合いにばったり。リアル友達ゼロからスタートした森田さんの行動力が生んだ結果には、たくさんの勇気をもらいました。


 


(プロフィール)
森田由樹子さん 北海道札幌市出身。読売新聞社に勤務し、社内結婚で双子をもうける。2006年富山県に三世代で移住。2008年自然体験やエコツアーを企画催行する旅行会社エコロの森を起業。現在に至る。

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