子どもの教育をきっかけに移住を決意した人、やりたいことを邁進するために地域で家を借りた人、二拠点が今の暮らしの形に定着している人。少し前をいくニュー・移住者のみなさんに、それぞれの暮らしをより詳しく知るための質問に答えていただきました!
Case2. マイプロジェクト二拠点生活
大学のゼミをきっかけに和歌山県・すさみ町と出合い、大学4年の冬に近隣の田辺市に家を借りた藏方萌衣さん。宿に泊まるのではなく、家を借りる選択をして、地域と関わりながら自分のプロジェクトを進めています。
Q:プロジェクトを進めるにあたり、家を借りる選択をしたのはなぜですか。
A:地域の人との関係性の中で行うものづくりをやり続けるためです。
大学3年生のとき和歌山県・すさみ町に10日間滞在したことをきっかけに、その後何度も再訪。知り合った人の家に泊めていただいたりしながら、1か月以上の滞在をしたこともあります。東京でしか暮らしたことがない私にとって、すさみ町の人々の人との距離の近さには驚きました。都会にはないガンガン来るコミュニケーションと、人の話を静かに聞いてくれる愛情深さがあり、こうした関係性の中でものづくりをしたいと思うようになりました。だからといって人の家に長期滞在するのは迷惑がかかります。自分の拠点があったらと考えている際に出合ったのが、田辺市内の一軒屋。ここでなら自分のやりたいことができると感じ、今年2月に家を借りました。
Q:地域とどのように関わりながら、プロジェクトを進めていますか?
A:つながりで出合った地域の素材で、プロトタイプをつくっています。
3年生では、有獣害の動物の毛皮を活用する「しばきプロジェクト」を、4年生では田辺市の素材を用いてコールドプロセス石鹸をつくる「石鹸デザインプロジェクト」に取り組みました。石鹸はこの地域における「人との関係性」を表現したいと考え、長期滞在中にアルバイトをしたり、イベントに参加したりと、自分自身が地域に入ることでまちのことを知り、関係性を築いていきました。石鹸に配合する素材は、ヒロメという海藻のパウダーや、三宝柑という柑橘の精油など、このまちだからこそ出合えたもの。現在も、いろいろな素材を試しながら石鹸のプロトタイプを作成中です。素材を提供してくれた方々には、出来上がった石鹸をお渡しに伺っています。
「石鹸デザインプロジェクト」は地元の人を含めたチームで行っていて、相談できる安心感とスムーズに地域の人とつながれる心強さがあります。一人暮らしすらしたことがない私が、二拠点生活に踏み出せたのも、チームあってこそです。
Q:今後、この家をどのように活用していこうと考えていますか?
A:私だけではなく、みんなの拠点にしていきたいです。
空き家だったこともあり、今は住み心地のよいように改修を進めています。そして、ただ住む家にするのではなく今までやってきたプロジェクトの展示や、ワークショップができる場としても活用していきたいと考えています。内装は元・美大生らしく、ライティングやインテリアにこだわった美術館のような世界観にできたらいいなと構想中です。
また、チームメンバーがやりたいことをやる拠点にもしていきたいですし、地域の方の「居場所」でもありたい。家がある江川地区は古くからの住宅街で、若い人は珍しいのですが、少しずつ仲よくなって、地域の人同士をつなげる場にもなればいいと考えています。
今年4月から東京のグラフィックデザインをする会社に就職しました。連休や長期休みに通うことになりますが、専門性を磨いて、田辺市やすさみ町の人にデザインを通して恩返しができるようになりたいです。そして、将来的にどこでも仕事ができる修行のつもりで励みます。
「石鹸デザインプロジェクト」・藏方萌衣さんの、移住にまつわる学びのコンテンツ。
Instagram:Lacoma@すさみ町
@lacomaguesthouse
すさみ町の『Lacoma』は出会いやきっかけとなる場を提供してくれるゲストハウス。ここを訪れたことで地域がより好きになりました。オーナーのさっちゃんが行うインスタライブも頻繁に開催しているので、まずはそちらを見てみてください!
Instagram:olographical
@colographical
田辺市在住のデザイナー・竹林陽子さんが手がけたプロダクトやポスターなどの作品を掲載するアカウント。デザインを軸に写真やイラスト、企画にまで携わる竹林さんは、私にとって憧れの存在。将来、このような幅広い働き方をしたいです。
YouTube:鹿熊生活(シカとクマ)
DIYでリノベーションをして「和室と古道具のある暮らし」を発信するYouTube。黒を基調としたインテリアはシンプルモダンで、古民家風のノスタルジックな雰囲気が、私が暮らす江川の雰囲気にマッチ。拠点づくりの参考にさせてもらっています。
text by Kaya Okada
記事は雑誌ソトコト2024年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。