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特集 | まちをワクワクさせるローカルプロジェクト2

わくわくするローカルプロジェクトのつくり方。 ー 事例3選 ー

雑誌『ソトコト』編集部

雑誌『ソトコト』編集部

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目次

INTERVIEW#3:田中 亘さん
生活の一部としての「マーケット」か、楽しむための「イベント」か。

たなか・わたる●神奈川県出身。大学在学中に「Farmers Market@UNU」のスタッフとして働きはじめ、2021年9月から事務局長に。3名のコア・メンバー、15名ほどの設営・撤収・事務局サポートメンバーとともにマーケットを運営している。現在は浜松と東京の二拠点生活。

時々新しい風を入れながら、習慣化していく仕組み。

毎週末、東京・渋谷区青山の国連大学前で開催している「Farmers Market@UNU」に関わり始めたのは、大学生だった2012年から。以来、気づけば10年以上スタッフとして働き、2021年9月からは運営全体のまとめ役・事務局長をしています。

1回の出店数は、75〜80店舗ほど。数名のスタッフとともに毎週開催しているので「大変そう」と思われることもあるかもしれませんが、会場の設営・撤収メンバーも過去にないほど充実し、習慣になっているため、「朝のラジオ体操」のような感覚です。1か月に1度開催するほうが、つくり込みが必要になって、大変ではないでしょうか。「毎週やる」ことは、2009年の立ち上げの時に決めたものと聞いていますが、週末に行けば必ずそこにあるという状況を継続してつくったことがこのマーケットの大きな強みだと思います。震災やコロナを経て、試行錯誤しながらも、暮らしの一部としてのマーケットになりました。

お客さんと店主の対話シーンがよく見られる「Farmers Market@UNU」。

運営にしても、少人数で毎週開催しているからこそ事業として成り立つと考えています。そして必ずここでやっているという安心感から、固定のお客さんが育まれ、その様子を受けて毎週末出店してくれる人たちが生まれます。また、真夏や真冬の出店はやや少なくなるけれど、春と秋にはそれをカバーできる数の出店や来場が見込め、運営や出店者さんの売り上げの面でも、年間で見たらある程度の売り上げが立つだろうという予測もたてられます。

マーケットのあり方は「なにがしたいか」によると思います。非日常の盛り上がりをつくりたいと思うのなら、毎週開催よりも不定期開催の「イベント」のほうがいい。そうではなく生活の一部としての「マーケット」をつくりたいのであれば、定期開催にしたほうがいいです。コーヒーやワイン、お茶など、テーマとコンセプトを決めたイベントを企画することも、マーケット自体に新しい風を入れるために重要だと考えています。

コロナ禍、妻の実家がある静岡県浜松市で過ごしていて、東京に行けないときに「Good Morning Market 西鹿島」というマーケットを個人的に企画していました。これまで毎週末当たり前のように旬の農作物やつくり手の思いのある商品を買っていたのに、行き来ができず生活の一部ではなくなってしまったときに、仲よくさせてもらっている『TIME DRIP COFFEE』さんや『やま市パン商店』さんなどと話をする中で、きっかけをもらいました。

出店者さんは紹介でつながった方々。一緒に楽しみ、共感できるような関係性をつくれたらと、お店に伺って声を掛けました。会場は材木屋さんだった場所で、街中から離れていることもあり、「なかなか人が来ないのでは」と心配もされましたが、いざやってみると普段は同じ場所に集まらない出店者が一堂に会したことや、各々の発信力もあり、想像以上に多くの来場者がありました。ただ、東京での仕事がメインとなったことや諸事情もあり、現在は開催していません。

リアルなコミュニケーションこそ、マーケットのおもしろさ。

お客さんにより楽しんでもらうには、運営者は「その日のおすすめ」を自分の視点で用意するといいと思います。僕も最初はそうだったんですけど、初めて行ったマーケットでは何から見ていけばいいかわからない。「今日のおすすめはなに?」と聞かれたら、例えば「あの農家さんの人参はこうして食べてみたらおいしいですよ」とか、「今日はこんな新しい出店者さんがいますよ」ということを伝えると、単なるモノの売り買いだけの場ではなくなり、新たな発見や出会いが生まれ、マーケットをより楽しんでもらえるはず。

野菜や果物だけでなく、きのこや米、花など出店する農家のジャンルは幅広い。

もちろん生産者と直接話してもらうことも大きくて、例えば「この桃を皮ごと食べてみて」と言われて「皮ごと!?」と思いながら食べたときの、驚きとともに味わう体験は、つくり手から直接買うことで起きること。ネットで買ったものと味は変わらなかったとしても、それ以上の感動が残ります。そんなリアルなコミュニケーションが、マーケットのおもしろさです。

僕自身、10年以上もマーケットに関わり続けていられるのは「知り尽くした」という瞬間がないからだと思います。土日の現場だけだったら仕事以上のものではなかったかもしれませんが、出店している農家さんの畑に伺って、その環境や暮らしがわかると、今までと見え方も変わってくるんです。マーケットを離れて相手のフィールドに伺うことで、より深く関われるようになることが本当におもしろい。マーケットは買う場所でもあり、食の好奇心や、人との関係性を深めていける場でもあるということも伝えていけたらと考えています。

「Farmers Market@UNU」・田中 亘さんの、ローカルプロジェクトがひらめくコンテンツ。

Place:コーヒーショップ『ミハル』
僕が「Good Morning Market 西鹿島」をやるきっかけと機会をくれた『TIME DRIP COFFEE』の鈴木さんご夫妻が運営するコーヒーショップ&焙煎所。毎週のように通い、コーヒー片手に何気ない会話の中でいつも刺激をもらっています。

Plece:TAKIGAHARA FARM
「Farmers Market@UNU」を立ち上げた黒崎輝男さんが手掛けたファームハウス。行くたびに新しい状況が生まれていて、「農のある暮らし」の理想郷のような場所。マーケットとして、もっと連携していたった先に、これからの可能性を感じます。

Instagram:飯尾裕光さん @hiro_mitsu_110
名古屋市の「東別院暮らしの朝市」を運営している飯尾裕光さんの日常はとにかくパワフル。ご自身も畜産や農業など第一次産業に関わりながら朝市の運営をしている生き方のリアリティに、とても刺激を受けています。

text by Kentaro Matsui, Reiko Hisashima & Kaya Okada

記事は雑誌ソトコト2024年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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