今月のまちのプロデューサー 中野 圭さん
今回バトンを受け継いだのは、漁師として働くかたわら、岩手への若者のU・Iターンを促進する『wiz』の代表も務める中野圭さんだ。岩手での活動に特化したクラウドファンディング「いしわり」の運営や、大学生が地域課題の解決と新規事業の開発に挑む「実践型インターンシップ」のコーディネート、それに地域おこし協力隊の採用・活動支援などを行っている。
中野さんは大学進学とともに上京。卒業後は一般企業に就職するも、岩手県大船渡市にある実家が漁業に従事していたこともあり、いつかは第一次産業を活性化させるための仕事をしたいと考えていた。その後、国産建築用木材の流通促進のためのウェブサイトを運営する会社を創業。だが、その直後に東日本大震災が発生した。被災地となった地元でボランティアなどをする中で、自分のように地元に戻って復興に携わったり、ほかの地域から岩手に来て活動する魅力的な若者に知り合うようになった。「これからも若者が自然と岩手に集まるようにしたい」との思いを胸に、この地でNPOを立ち上げた。
その事業は多岐にわたる。例えば、「いしわり」は、岩手をよくする活動に限定したクラウドファンディングのサービス。「手は貸せないが金銭面での支援なら喜んでしたい」と考える人たちの思いに応える形で、現地の若者と外からの支援をつなげるプラットフォームをつくった。古民家再生プロジェクトやIT寺子屋など、これまで多くの事業がここから生まれた。また、地域おこし協力隊の活動支援も軌道に乗り始めた。官民連携によって、行政だけではつかむことの難しい若者のニーズを考え、どうしたら首都圏から隊員が集まるのか、日々試行錯誤をしている。よりやりがいを感じられる仕組みをつくるなど、工夫を重ねている。
ゼロから事業を練り、形をつくった1年目。岩手県内のすべての市町村をまわり、官民連携の土台をつくった2年目。その活動が、少しずつ実りはじめた3年目。そして今年、4年目を迎えた。様々な事業を拡大させるためにも、今はとにかく『wiz』で働く仲間を増やしたいという。その仲間とともに、県内の企業がさらに資金調達できる機会をつくることを目指す。そして、人生をかけて岩手に戻ってくる人を応援しつつ、ともに歩んでいきたいと考えている。
「どんなに社会にとって役立つ事業を考えても、それを一人だけでやろうとするのは、なかなかきつい。志が同じ仲間を見つけて一緒に悩み、考えていけば必ず未来は開ける」と中野さん。地元で生まれた若者が地元で働くための選択肢を増やし続ける中野さんたちの挑戦は、きっと地域を持続させるモデルケースの一つになるだろう。