「作る人も食べる人も『農ある暮らし』をともに楽しめる農園」を目指す『えと菜園』は、神奈川県藤沢市で『体験農園 コトモファーム』を営んでいる。都市部で“農”に親しみたい人々が集まる場所から、代表の小島希世子さんが紹介する本とは?
『えと菜園』代表|小島希世子さんが選ぶ、「農度」を高める本5冊
利用者には、まったくの初心者から経験のある方、この農園をきっかけにステップアップして、本格的に農業に取り組んだ方もいます。最近はコロナの影響で、子どもと一緒に安心して過ごせるから、と利用される方も増えています。
とはいえ、「畑仕事は手間がかかって大変」と感じる人も多いかもしれません。そんな方にもお薦めしたいのが『ぐうたら農法のすすめ』です。著者の西村和雄さんは有機農業の世界ではよく知られた方。専門書とは異なり、エッセイのように読みやすいのですが、土とはなにか、なぜこの作物はこのように育てるのかなど、農業を営むための基礎知識をしっかりと押さえている説明が素晴らしいんです。“ぐうたら”というのは、野菜づくりは自然にまかせ、無理にコントロールしない、というスタンス。肥料や農薬などをきっちり投下して収量を上げるのではなく、できるだけ人の手はかけずに、でもポイントは押さえるということ。実際、本に書かれているとおりに野菜をつくるととてもうまくいき、驚きました。家庭菜園に挑戦してみたいと思っている人なら、きっとやる気が出てくると思います。
『土壌微生物の基礎知識』は専門的な本ですが、作物を育てる土の中で何が起きているのかを理解できる一冊です。土の上の作物は目に見えますが、それを育てている土の中は目に見えません。その見えない世界を教えてくれます。土壌の中にいるカビや微生物、菌がなにを食べ、どのように植物の栄養になっていくのか。日々、土の中で繰り広げられているドラマを感じられます。『コトモファーム』の土の中にも、数え切れないほどの微生物がいると思うと、土を見る目や土に向かう気持ちが変わり、世界が広がります。
さて、畑ではいろいろな昆虫に出合います。列をなすアリの中に逆走しているアリを見つけると「なんで逆に進んでいるだろう? 何を考えているんだろう?」と聞いてみたくなります。そんな気持ちを満たしてくれるのが『もしも虫と話せたら』です。人間とは違う視点からの言葉にハッとさせられることもあり、楽しんで読むことができます。