あなたもできる楽しい短歌。
今回紹介するリトルプレスは『秘密基地女子おろろん図鑑』。タイトルを見ても、表紙を見ても、内容は想像できず、「秘密基地」と「女子」と「おろろん」と「図鑑」から、文脈さえ浮かんでこない。
わけが分からないままページをめくっていくと始まる「HOP編」。わら半紙に濃い青で印刷されているのは、なんとなくゆるいマンガ。
「はじめまして、ショージサキです。短歌を作っています!!」「短歌というと難しいイメージがあるかもしれませんが基本は、5、7、5、7、7の31音の定型で作者が短歌と言いはれば短歌で良いと私は思います笑」。
このリトルプレスを作ったのは、歌人のショージサキさん(ちなみに俳人は俳句を作る人で、短歌を作る人は歌人だと、マンガにも描かれている)。
2012年秋から短歌なzine『うたつかい』で連載しているマンガの一部を編集、全編書き下ろし再録したのが『秘密基地女子おろろん図鑑』。
今にもましてグータラしていた中学生のショージサキさん。短歌を作る授業をボイコットするほど関心を持てなかったにもかかわらず、枡野浩一さんの著書『かんたん短歌の作り方』との出合いをキッカケに、「なんか作ってみよっかなー」と短歌を始めたそう。高校時代は文芸部で唯一の短歌専任。SNSで短歌をつぶやいている人を知ったのをキッカケに短歌の世界が広がり、文学フリマで同人誌を頒布したり、歌会に出席するように。
マンガは「歌人って何をやってるの?」と続き、歌会でのエピソード(なぜか方向オンチとか、ドMの方に向いているなど)を紹介しつつ、基本的な短歌の構成、作り方、書き方の指南も分かりやすく載せてある。
「STEP編」では、「ここで1句!!」が禁句な理由や、歌人であることのカミングアウトの方法。筆名(ペンネーム)や歌会の基本知識。
「JUMP編」は、いよいよ歌人デビューを試みる時に役立つ知識あれこれ(短歌・俳句が充実した書店や、歌人が集う中華料理店)から、短歌を百首作る「地獄の百首詠デスマッチ!!」での苦闘など。
ひととおり読むと、意外と短歌の敷居は低く、楽しみ方も多種多様。国語や文学に苦手意識があっても、万人に楽しみが開かれていることがよく分かる。
ただ最後まで、なぜ「秘密基地」なのか、なぜ「おろろん」なのかは、分からないままだった。
『秘密基地女子おろろん図鑑』編集人より一言
「短歌って、渋い趣味だね……!」とよく言われてしまうのですが、そんなことはないんだな〜こんなちゃらんぽらんな奴でも作ってるんだな〜と思っていただければうれしいです。ぜひさまざまな短歌の楽しみ方について知っていただければと思います!
今月のおすすめリトルプレス
『秘密基地女子おろろん図鑑』
短歌なzine『うたつかい』で連載中のマンガをまとめた一冊。
編集:ショージサキ
2017年5月発行、265×193ミリ(32ページ)、648円