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特集 | 地域をつくるローカルデザイン集

井上有加さんが選ぶ「山林×ローカルデザインのアイデア本5冊」

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大学生のときに林業にふれ合い、『林業女子会』を立ち上げた井上有加さん。井上さんに「ローカルデザイン×山林」をテーマに、持続可能な山林や林業について考える視点を与えてくれる、おすすめの5冊について伺いました。

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(左から)1. 木のこころ ─木匠回想記 / 2. 日本人はどのように 森をつくってきたのか
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(左から)3. 二宮翁夜話 / 4. 森は生きている / 5. 樹木と木材の図鑑 ─日本の有用種101
目次

井上有加さんが選ぶ、山林×ローカルデザインのアイデア本5冊

コンラッド・タットマンの『日本人はどのように森をつくってきたのか』は、ひとことで言うと「林業の大河ドラマ」です。日本の山林が縄文時代から現代まで、どのような歴史を辿ってきたのかを読み解くことができます。

私は以前、林業関連のコンサルティングの仕事をしていて、日本中の木材の産地を見て回り、林業のマーケティング支援をしていたことがありました。そんな折に読んでいたのがこの本で、なぜ日本の木材には「〇〇杉」や「〇〇桧」といったブランドが多いのか、どのような経緯でブランド化され山林が産業として形成されていったのか、どうして豊かな山林が破壊されたのか、あるいは保護されてきたのかなど、日本の山林の失敗例や成功例、その背景を読み解くことができます。

林業の場合、漁業や農業とは違い、木を植林し、育て、再び資源として活用していくとなると、そのサイクルは100年単位。そのため、長い時間をかけて人と山林が、地域と森が豊かな関係を築く(デザインする)となると、先人たちがどれほどの時間と労力と知恵を費やして林業をつくってきたのか、この本をとおして知ることは、大切な姿勢だと感じています。

ジョージ・ナカシマさんの『木のこころ』には、彼の自叙伝に加え、木を扱う人の〟心構え〝が書かれています。ナカシマさんが本当に自然をリスペクトし、ゆえに樹木に対する愛が深かったことや、独自の観察眼も読み取れておもしろいです。

情緒的なこと以外にも、林業界でもよく目にする小規模なモノづくり、その経営をどう持続的に行うか、という視点がまとめられていて、実用面でも参考になります。技術的な話はもちろん、伝統的な手仕事と機械を使うこと、デザインのこと、経理やお金のこと、素材の見極めから管理の仕方まで、ためになる知見がちりばめられています。

私が営んでいる工務店も家族経営なので、持続可能ないいモノづくりをしていくうえで、ナカシマさんの仕事は参考になります。何を意識すればいいのか、家づくりに通じる部分も多く、たくさんのヒントをくれる本です。ちなみに、私たちの経営理念「木のこころを、人のくらしに」という言葉は、この本から引用しています。木材を〟ただの材料〝としてではなく、〟こころあるもの〝として活かすやさしい視点は日本人ならではで、山林のこれからを考えるなら大切にしたいところです。

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いのうえ・ゆか●京都大学農学部で森林について学び、大学院では森林科学を専攻。並行して『林業女子会』を立ち上げる。卒業後、コンサルティング会社で林業マーケティングに従事。現在は高知県安芸市で工務店を経営し『林業女子会@高知』代表も務める。
記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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