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サスティナビリティ

特集 | ローカルヒーロー、ローカルヒロインU30

映画監督・ふくだももこさんが選ぶ「自分を見つける本5冊」

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養子であることをオープンにしている、映画監督で小説家のふくだももこさん。自分とは、自分らしさとは何か。そんな思考を誰よりも重ねてきたふくださんに自分探し・個性のヒントが見つかる5冊を選んでもらいました。

*30代の先輩からU30の皆さんへ。今回は先輩たちの選書を通して、U30の皆さんに、自分たちにもこれからやってくる30代をより豊かに、気持ちいい生き方をしてもらえたらと思い、11名の方に本を選んでいただいています。
 (162023)

i/西 加奈子著、ポプラ社刊
想うことで生まれる、圧倒的な強さと優しさが描かれた作品。自分とは他者との関わりのなかに生まれると分かります。悩みが言語化されていないときに読むと、言葉を見つけられた感覚に。西さんは言語化の神です!

GALS!!/藤井みほな著、集英社刊
高校生の主人公や友人たちを描いた『GALS!!』が全10巻あり、『GALS!!』は彼女たちの高校卒業後を描いた続編で現在4巻まで出ています。リストカットや援助交際などにも触れられ、社会派な一面も。自分を持つことを学べます。

私は生後4か月で乳児院から特別養子縁組で両親に迎えられ、仲のいい両親のもとで同じく養子の兄と育ちました。両親から愛情をたくさん注いでもらったことや、大阪で育ったことも影響していると思いますが、自分の境遇を「なんかおもろいやん!」と自然に明るくとらえていました。今も自分は、「養子のポジティブ担当」だと思っています。

でも20代は、「明るいだけでいいのだろうか」「私のこの発言は本心なんだろうか」と悩んだ時期もありました。まさに自分探しです。

そんな「自分ってなんだろう」と思っている人にお薦めしたいのが『i』。映画専門学校時代、講師に出自や家族のことを話したら、西加奈子さんの作品を薦められました。それから”ドはまり“して、西さんの作品は全部読みました。私の「人生の支柱」になっています。

この小説の冒頭で「この世界にアイは存在しません」と教師が言い、主人公のアイちゃんは衝撃を受けます。アメリカ人と日本人の両親がいて、シリアから来た養子なんです。主人公はシリアの情勢が悪いとき、あの国にいたままだったらこんな風に生きているだろうか、この道を選択しただろうか、と思考します。その設定やストーリーに「私のことか?」と共感しながら読みました。

育ててくれた両親は自分を愛してくれているけど、もし養子にしてもらえなかったらどうなっていただろうかと。ニュースなどで子どもの虐待死や貧困家庭などを見聞きすると「それは私だったかもしれない」とモヤモヤしていました。そこを西さんがすごい筆圧で書いてくださった作品です。「あんたはどうするん?」と問題も投げかけられましたし、ハッとさせられ、スッキリもしました。

自分らしさについて考えている人に薦めたいのが、漫画『GALS!!』です。主人公は、天下無敵のパワフルなギャル・寿蘭ちゃん。刑事を目指していて、運動神経と明るさと「ギャルはこうだから」という信念で、人を救っていくストーリーです。自分をもって生きていて、むしろ「我」しかない彼女のスタイルを感じてほしいですね。「自己中」はよくネガティブに使われますが、私は褒め言葉だと思います。自分のことは一番に考えるべき。たとえ会社勤めをしても、自分はなくならないんだと知ってほしいです。

自分を大切にして、ちょっとだけ誰かに優しくできたら、世界はもっとよくなる。今回紹介するのは、そう教えてもらった5冊です。

空が青いから白をえらんだのです
─奈良少年刑務所詩集

寮 美千子著、新潮社刊
 (162024)

少年受刑者の詩が紹介された本で、行間に込められたものがたくさんあります。人に見せる前提のSNSとは違う、自分に向き合って自分の言葉を持つことの強みを考えさせられます。私も日記や詩を書こうと思いました。
表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
若林正恭著、KADOKAWA刊
 (162025)

芸人さんによる旅行エッセイかと思いきや、親と向き合う一人の男性の話で驚きました。若林さんが旅をしながら自分の言葉を探っていきます。旅は、自分の本性が分かるものなのかも。自分の本性を知っていますか?
裸足で逃げる─沖縄の夜の街の少女たち
藤井みほな著、集英社刊
 (162026)

人とどうやってコミュニケーションをとればいいかと悩む人におすすめの一冊。人の話を聞くとは答えを出すのではないこと、相手の言葉に耳を澄ませば、心を開いてもらうきっかけになり得ることなどを教えてくれます。
 (162027)

ふくだ・ももこ●1991年、大阪府生まれ。日本映画学校の卒業製作の映画『グッバイ・マーザー』が複数の映画祭で入選。2016年、小説『えん』で第40回「すばる文学賞佳作」を受賞。2019年『おいしい家族』(日活)で長編商業映画デビュー。
photographs by Yuichi Maruya text by Ikumi Tsubone
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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