養子であることをオープンにしている、映画監督で小説家のふくだももこさん。自分とは、自分らしさとは何か。そんな思考を誰よりも重ねてきたふくださんに自分探し・個性のヒントが見つかる5冊を選んでもらいました。
でも20代は、「明るいだけでいいのだろうか」「私のこの発言は本心なんだろうか」と悩んだ時期もありました。まさに自分探しです。
そんな「自分ってなんだろう」と思っている人にお薦めしたいのが『i』。映画専門学校時代、講師に出自や家族のことを話したら、西加奈子さんの作品を薦められました。それから”ドはまり“して、西さんの作品は全部読みました。私の「人生の支柱」になっています。
この小説の冒頭で「この世界にアイは存在しません」と教師が言い、主人公のアイちゃんは衝撃を受けます。アメリカ人と日本人の両親がいて、シリアから来た養子なんです。主人公はシリアの情勢が悪いとき、あの国にいたままだったらこんな風に生きているだろうか、この道を選択しただろうか、と思考します。その設定やストーリーに「私のことか?」と共感しながら読みました。
育ててくれた両親は自分を愛してくれているけど、もし養子にしてもらえなかったらどうなっていただろうかと。ニュースなどで子どもの虐待死や貧困家庭などを見聞きすると「それは私だったかもしれない」とモヤモヤしていました。そこを西さんがすごい筆圧で書いてくださった作品です。「あんたはどうするん?」と問題も投げかけられましたし、ハッとさせられ、スッキリもしました。
自分らしさについて考えている人に薦めたいのが、漫画『GALS!!』です。主人公は、天下無敵のパワフルなギャル・寿蘭ちゃん。刑事を目指していて、運動神経と明るさと「ギャルはこうだから」という信念で、人を救っていくストーリーです。自分をもって生きていて、むしろ「我」しかない彼女のスタイルを感じてほしいですね。「自己中」はよくネガティブに使われますが、私は褒め言葉だと思います。自分のことは一番に考えるべき。たとえ会社勤めをしても、自分はなくならないんだと知ってほしいです。
自分を大切にして、ちょっとだけ誰かに優しくできたら、世界はもっとよくなる。今回紹介するのは、そう教えてもらった5冊です。
─奈良少年刑務所詩集
寮 美千子著、新潮社刊
若林正恭著、KADOKAWA刊
藤井みほな著、集英社刊
想うことで生まれる、圧倒的な強さと優しさが描かれた作品。自分とは他者との関わりのなかに生まれると分かります。悩みが言語化されていないときに読むと、言葉を見つけられた感覚に。西さんは言語化の神です!
GALS!!/藤井みほな著、集英社刊
高校生の主人公や友人たちを描いた『GALS!!』が全10巻あり、『GALS!!』は彼女たちの高校卒業後を描いた続編で現在4巻まで出ています。リストカットや援助交際などにも触れられ、社会派な一面も。自分を持つことを学べます。