新型コロナウィルスの影響で社会が大きく揺さぶられ、さまざまな分野で大きな変化が起ころうとしています。これからの未来はどうなっていくのでしょうか? 不安定な社会で暮らし、生きていくためのヒントをくれる、そんな“未来をつくる本”を紹介します。
移動×佐別当隆志さん
「多拠点生活」や「シェアリング」に関する活動をしている佐別当隆志さんが見つめる、未来の人々の「移動」、目指す世界とは──。彼の考える社会の“未来予想図”を知り、「移動」をさらに楽しむ5冊を紹介。
今後の人口減少社会では、各地で人口の奪い合いをするのではなく「都市と地方で人口のシェアリングをするといいのではないか」と考えています。家や移動手段も同様です。そんな僕がずっと影響を受け続けている本が『地域社会圏主義』。専用住宅を脱してコミュニティのなかでライフスタイルに応じて引っ越しをする「地域社会圏」を定義しています。マイホームを所有する考え方の人はまだ多いのですが、コミュニティに所属さえすれば選択肢が増えて、どこででも暮らしていけると説いています。
僕の夢は「日本中どこに行っても自分の居場所がある」という世界をつくることです。そこで『ADDress』では、2019年から多拠点生活を実現するサービスの提供を開始しました。管理している全国80拠点以上の家に(2020年9月現在)、初期費用はなし、光熱費込みで月額4万円から住めるサービスです。
今、オススメしたいのはMaaS(マース)関連の本。MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、マイカー以外の交通手段によるモビリティ(移動)を最適化してつなぐ新たな概念のこと。これまでの移動の仕方ではなく、定額制で車やバイクなどのシェアを含めて複数の最適な移動手段を組み合わせて利用するサービスで、利便性のみならず、社会の課題解決にも期待が寄せられています。
読みやすいものを2冊紹介します。1冊目は『Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命 ─移動と都市の未来─』。MaaSの専門家である著者の日高洋祐さんらが、全15業種のビジネスアイデアやアップデートされる未来都市の姿を解説しています。もう一冊が『日本一わかりやすいMaaS&CASE ストーリーで理解する』。観光型MaaSや都市型MaaSについての解説に加えて、各分野の実践者40人の事例が紹介されています。僕は2025〜30年に普及し、30年代はMaaSありきの移動社会に変わっていくと考えています。
ただし、移動だけの重要性を訴えたいのではありません。人は移動そのものが目的ではなく、どこかに行きたいからこそ移動します。MaaSが浸透して「どこでも住める・働ける」となったときに、人は本当に魅力のあるところに集まるようになるでしょう。移動の未来を考えると、何の価値が高くなるのかが見えてくるのです。
佐別当さんおすすめの5冊
●Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命 ─移動と都市の未来─(日高洋祐・牧村和彦・井上岳一・井上佳三著、日経BP刊)
MaaSの基本構造やビジネスモデル、2030年のスマートシティ、全国で進んでいるMaaSの実証実験などを紹介しています。車の自動運転が本格的に始まればMaaSの普及は加速するでしょう。そんな未来を考えるのにオススメの一冊。
●地域社会圏主義(山本理顕著、LIXIL出版刊)
建築家である山本さんが個人や家族、社会の変化を建築に落とし込み、「地域社会圏」を定義。1世帯に1住居ではなく、集団による共同生活で共有スペースや住居を柔軟に使うことを提案しています。常識や価値観が覆されるような一冊。
●関係人口をつくる─定住でも交流でもないローカルイノベーション(田中輝美著、木楽舎刊)
特定の地域に継続的に関わる人を指す「関係人口」の考え方と、それを増やしていった事例が紹介されています。定住や移住ではない“移動”の形、地域の人々とのだんだん濃くなっていく関係性、多拠点生活を考えたい人にオススメ。
●マンガ サ道─マンガで読むサウナ道(タナカカツキ著、講談社刊)
僕が地域で暮らしたいと思った理由は「地域の温泉やスナック、そしてサウナ巡りがおもしろい!」と感じたからでした。初めて訪れる土地では、サプリでサウナを調べて楽しんでいます。サウナが移動のきっかけになってもいいのです!
●日本一わかりやすいMaaS&CASE ─ストーリーで理解する(中村尚樹著、プレジデント社刊)
『トヨタ自動車』や『ソフトバンク』などの大手企業がすでに参入しているMaaSと、ネットで車を外部につなぐCASE。さまざまな企業や人の物語を通じて、私たちの生活がどう変わるのかを探った本。弊社の活動も紹介していただきました。