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「キリン解剖記」郡司芽久 ー10年で30頭! 世界で一番キリンを解剖しているキリン研究者の記録

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目次

「ごめん、キリンが死んじゃって……」

キリン研究者の筆者にとっては、キリンの解剖が最優先事項。「キリンが亡くなりました」という連絡から始まって約1週間、筆者はキリンの解剖にかかりきりになる。当然のように、その間の予定は全てキャンセルである。19歳で初めてキリンを解剖してから約10年、30頭のキリンを解剖した筆者は、もしかしたら世界で一番キリンを解剖している人間かもしれないという。キリンが大好きでキリン研究者になった筆者が綴る、キリンだらけの解剖記。

解剖記というだけあって、「バラバラのキリンの遺体がひっそりと横たわっていた」「刃渡り17センチの解剖刀」「太腿から踵に向かってゆっくり丁寧に皮を剥がして」「骨と見紛うくらい太く真っ白なアキレス腱を切断すると」「ヒト1人ががすっぽりと収まりそうな大きさの胴体にしがみつき、肋骨を丁寧に1本ずつ外して」等々、解剖の様子が臨場感たっぷりに描かれている。しかし、そこに「解剖」という言葉で想像するグロさは全くなく、あるのは筆者の「キリンのことをもっと知りたい」という溢れるキリン愛のみ。

筆者が気になったのは、キリンの長い首。人間もキリンも、哺乳類は基本的に頚椎の数は7つだが、平均的なキリンの首の長さは約2m、頚椎1つの長さは約30cm! そんなキリンの首に魅せられて、ひたすらにキリンの解剖を続ける筆者がついに解明したのは、「8番目の頚椎」の謎。あの長い首で地面の水を飲める秘密が、存在するはずのない「8番目の頚椎」にあるという。秘密の解明に至るまでの描写が素晴らしく、読みながら首を前後左右に傾けて筋肉の動きを確認したくなってしまう。

筆者とともにキリンの首の謎を解き明かしたら、きっと前よりキリンが好きになる。動物園へ、博物館へ、キリンに会いに行きたくなる1冊。

キリン解剖記

著者:郡司芽久
出版社:ナツメ社(2019/7/8発売)
単行本(ソフトカバー):216ページ

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