「やってこ!」とは実践主義の合言葉である。ローカルに必要なのは考えて立ち止まるよりも、まず実践すること。生き様を見せ続けることで、巻き込める人が増える。
ソトコトのみんな〜! やってる? 長野で『やってこ!シンカイ』というお店をやっている編集者の徳谷柿次郎と申します。長野市・善光寺の近くにある『シンカイ金物店』という古いお店を改装して立ち上げた『やってこ!シンカイ』では、全国のローカルプレイヤーがつくった雑貨や洋服、本など、たくさんのかっこいいアイテムを販売しています。
定額課金のネットサービスである『Netflix』や『Amazonプライム』のように、サブスクリプション制で出店者から資金を集めて運営していて、東京・長野をはじめとする全国各地から、自分の得意なことやできることを生かして「ローカルに新たな価値を生み出したい」と考える、気骨あふれる人たちが集まっています。
全国行脚から見えたもの。
お店でもあり、ローカルコミュニティでもある『やってこ!シンカイ』。その特徴は何よりも、みんなの合言葉にもなっている「やってこ!」に集約されています。「やってこ!」というのは、長野の仲間が酒の席で「金がないけど、やるしかない……やってこ!」と言ったのを僕が気に入って、ローカルの仲間たちを鼓舞するための言葉として強く言い始めたもの。かっこよく言うと「実践主義」のことです。
現状に満足することなく、さらなる高みを目指して「やり続ける」ことをよしとする価値観。お互いの活動にリスペクトを送りながらも、拳を突き上げて「もっとやってこ!」と鼓舞し合う関係性が、僕はローカルをもっとおもしろくすると思っているんです。
僕は普段、『Huuuu』という「雇用関係のない新しい働き方をつくる」、編集者・ライターのフリーランス集団を率いて、全国47都道府県を旅しながら、どこでも地元メディア 「ジモコロ」と小さな声を届けるウェブマガジン「BAMP」の編集長をしています。2017年5月から憧れの長野県に移住して、東京との二拠点生活も始めたのですが、全国の現場を見てきて感じたことは、「東京とローカルを反復横跳びして、その過程で得た学びや気づきを、社会的な価値として“実践”に落とし込まなければいけない」ということでした。
人口減少・少子高齢化社会に向けての大きな変化は、東京よりも、特にローカル経済にこれからますます影響を与えることになります。移住促進は一朝一夕に結果が出るものではないし、地方創生という言葉もどこか夢物語のようで、僕にはなんだかピンときません。
経済格差は広がる一方だし、これまでの行政のやり方だけに頼ったところで、ローカルの未来が先細りなるのは目に見えています。じゃあどうするか。僕は時代の変化を受け入れながらも、身の回りの人間関係を大切にし、自分が持っているあらゆる資源を生かして、「一人ひとりがおもしろく生きるために行動していくこと」が大事だと思います。
生き様をぶつけ合うこと。
観光以上、移住未満のゆるやかなローカルへの関わり方を指す「関係人口」という言葉をご存じでしょうか。全国のローカルにつながりを持つ『ソトコト』の指出一正編集長が提唱している、この時代を鋭く捉えた言葉です。でも、僕はそこに“自己実現=やってこ”の要素を加えた「実践人口」という言葉があってもいいと考えています。
実践は、生き様です。その生き様に人は価値を見出します。ヒップホップのフリースタイルバトルのように、その生き様と生き様のぶつかり合いがエネルギーを生み、結果として身の回りの人たちに元気を分け与えることにもなると、僕は信じているんです。
この連載では、僕が『やってこ!シンカイ』の実践を通じて考えたことや、現場で実際に起こっていることなどをお伝えします。みんなで一緒に「やってこ!」の可能性や未来を考えていきましょう。これからよろしくお願いします!