「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。
地域がそれぞれの特徴を活かしたサステナブルな社会をつくるための取り組み、地方創生。その実行には、主体となって活動するチームが不可欠ですが、チームづくりにあたっては、ビジョン(実現したい未来)、そしてミッション(果たすべき使命)を掲げることが肝要です。
スタート直後からチームの共通認識としてビジョン・ミッションがあることで、メンバーは個々の活動に没頭しながらも軸をぶらさずに進めます。ビジョン・ミッションは、全体の成長につながる中心軸です。
実現したい未来を描こう
2011年から全国各地を舞台にビジネスで地域課題を解決するための活動をしていた地域プロデューサーの齋藤潤一は、「地域はチャレンジの総量が少ない」ということを感じていました。こゆ財団を設立した宮崎県新富町でもそれは同じ。少子高齢化や財政難といった地域の課題解決には、例え小さくてもチャレンジを増やす必要がありました。
そこで、2017年4月のこゆ財団設立時に定めたビジョンが、「世界一チャレンジしやすいまち」です。優秀な人材の多くは、自らチャレンジしたいという意欲に溢れています。新富町やこゆ財団がそうした人材のチャレンジを受け入れたり、チャレンジに寄り添ったりすることができれば、この地域に多くの人材が集まってくる可能性は十分にあると感じていました。
果たすべき使命を共有しよう
優秀な人材が集まり、多様なチャレンジが生まれれば、地域には体内を流れる血液のように経済が回り始め、課題も解決へと動きます。私たちはこのことから、「強い地域経済をつくる」というミッションを定めました。大きな魚に食べられることなく海を自由に泳げるように、みんなで集まって大きな魚に見せた小魚の物語「スイミー」のように、小さくてもたくさんの経済が立ち上がることが持続可能な地域社会の実現につながると考えたのです。
こゆ財団が設立時に定めたビジョンとミッションは、現在に至るまであらゆる活動の中軸となっています。
新しい物事を生み出すことや、スピーディーに事業を動かすこと、多様な人材と関わることは、ともすればチームにとって不安や迷いの種にもなります。自分たちがどこに向かっているのか、何のためにやっているのかが見えにくくなるからです。そうしたときに立ち戻ることができるビジョンとミッションは、先の見えない時代を進むチームにとっての「港」のようなものだと考えます。