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サスティナビリティ

連載 | 森の生活からみる未来

あるヒューマンカテゴリーの存在❸

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 前回では、あるコミュニケーション方法でつながる「スマイル族」について書いたが、今月は、ある生活志向を共通の価値観とする「エシカル族」について。

 ぼくはニュージーランドの湖の畔の森の中で生活を送っているが、自給率は100パーセントではない。自分の庭にない野菜や果物を買い、カフェで食事をすることも当然ある。

 自分で育てている野菜と果物が無農薬・無化学肥料であること、自分で釣ってさばく魚が天然魚であること。そして、森の生活で得た気づきがそうさせるのか、お店では基本オーガニックなもの、可能であればフェアトレードのものを選ぶようにしている。

 ぼくが「オーガニック・ジャーニー」と称し、毎年、数か月間を費やす世界各国での移動生活でも、ニュージーランドにいるときと同様だ。

 オーガニック製品を作ったり提供している現場を視察したり、取材するという目的もあるが、旅の間はできるかぎりエシカルなものをセレクトするように心がけている。

 そんな森の生活と移動生活を何年か送っているうちに、エシカル族の存在に気づくようになった。

 彼らのことを説明するために、ぼくが毎年のように滞在しているパリでの体験を書いてみたい。

 ぼくの場合、旅の目的は観光ではなく、「暮らし、働く」こと。心地よく生活でき、効率よく仕事ができることが最重要ニーズとなる。

 パリではまず、世界クラスのエシカルなお店が集まるマレ地区を滞在地に決定。部屋の条件は、その中心にあること、リーズナブルでシンプルな内装であること。これらの条件を満たしてくれるホテルはないため、旅でいつも活躍するAirbnbを使う。こうやってマレ地区が、しばらくの間のぼくの生活圏となる。

 「プライドが高い」「アジア人に冷たい」「英語を話してくれない」。これは、ぼくが初めてパリに行く際に、旅友達から言われた言葉。

 しかしぼくは、現地でそういう経験をしたことがない。周りからも「本当?」と言われるし、ぼく自身も不思議だったが、その理由が、最近になってわかってきたのだ。

 滞在中にぼくが訪れるスーパーマーケットやマルシェは、ほぼオーガニック。飲食をするのも、オーガニックかベジタリアン系のお店。買い物をするのも、古着屋かフェアトレードのお店が多くなる。

 つまりそれらは、地球環境、ほかの生き物、そして人間の体に優しい生活スタイルを求める人が多く集う場所とも言える。つまりエシカル族たちの生息地なのである。

 彼らは穏やかで寛容、ハッピーでピースフル、そして仲間意識がとても高い。その理由は「自分たちがマイノリティである」という意識と、生活スタイルにあるのだろう。

 彼らは独特の、フレンドリーな態度、ていねいな説明、愛情あふれる表情で対応してくれる。彼らの生息域を、徒歩圏内の「ご近所さん」にすることで、嫌な思いをしないどころか、言葉にできない幸福な空気感に包まれるようになる。

 彼らの活動拠点に飛び込むことで、彼らとは簡単に出会えるが、つながるために必要なのが、スマイル族の共通言語「笑顔とウィンク」なのだ。すでにこの言語をマスターしているぼくは、彼らの空間に入った瞬間に、同族として受け入れられる。

 そして、これはパリだけでなく、ここニュージーランドではもちろん、どの国に行っても同じ。エシカル族の生息範囲は、静かに、世界中に広がっているようなのである。

 実は、彼らにはもう一つの共通言語がある。それは英語だ。ドイツ、デンマーク、イタリアといった英語圏以外でも、エシカル族は必ず英語を使ってくれる。これは、ぼくの推測なのだが、地球を通して「ひとつになりたい」という潜在意識が、そうさせているのではないだろうか。

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