リモート時代の「演劇表現」を考える。「劇団ノーミーツ」「劇団テレワーク」の声から

リモート時代の「演劇表現」を考える。「劇団ノーミーツ」「劇団テレワーク」の声から

ウイルス感染症が流行している最中に人の密集している場所には行きにくい。これは、何も今年初めて解ったことではない。これまでも、不特定多数の人が接触する場所でインフルエンザなどが流行することはあっただろう。そういう意味で、人が狭い場所に集まるということは今も昔も変わらずハイリスクであったのだ。しかし、少なくない人間が狭い所に密集することがひとつの文化であった場所がある。クラブ、ライブハウス、そして劇場だ。息の詰まるような場所で繰り広げられる出来事は人々を熱狂させ、ひとときの非日常をもたらしてくれる。現在、そのような場所が苦境に立たされている。そこで表現をしていたクリエイターも然りだ。

劇団の置かれている実情


新型コロナウイルス感染拡大の最中、舞台公演でクラスター感染が発生した例もあり、劇場での公演開催はいまだ難しいのが現状だ。複数の俳優がステージ上に密集する演出を避けるなど出演者側の感染防止を考える必要もあれば、観客の感染防止も考えねばならない。観客席を疎にすればその分動員は半減してしまう。


従来通りの公演のあり方が叶わなくなっている中、新たな演劇のあり方を模索する劇団も登場している。中でも斬新なスタイルで話題を呼んでいるのは、公演そのものを丸ごとリモートで実施してしまう劇団たちだ。無観客で実施した公演を配信するスタイルではなく、俳優同士がリモートで演劇をしている。「ビデオ通話というプラットフォームを舞台にしている」のだ。まるで実際の駅のホームを舞台にして群像劇を演じるように、Zoomなどを舞台にしている。
難しい挑戦ではあるが、「Zoom飲み」「リモートワーク」が人々に浸透した今なら、逆にそこを舞台にするのはリアリティのある舞台設定と言えるだろう。



2団体に訊く「リモート演劇の手応え」

リモート演劇はどのような手応えを感じられたか


そのような新たな挑戦を続ける劇団や、リモート演劇の実施歴のある劇団に、実施して実際どうだったかの話を聞いた。リモート演劇を実施しようとしている劇団の方や、観客として興味を持たれる方は、ぜひ参考にしてみてほしい。


●劇団ノーミーツ


リモート演劇


スタッフから演者に至るまで、稽古から本番までフルリモートで作品作りを行う劇団ノーミーツ。
5月に生配信された旗揚げ公演では5000人以上が、7月から8月にかけての公演では7000人以上が観劇した。9月には劇団メンバーが「株式会社Meets」を立ち上げ。時代状況に応じたエンタメのあり方を柔軟に模索し、表現の開拓者として先陣を切って進んでいく気鋭の集団だ。
携わるのは、これまでも演劇やクリエイティブに携わってきた、プロ中のプロばかり。オフラインとオンラインで、どのような表現の違いが生まれるのだろうか。
主宰の小御門優一郎さんに話を伺った。


……リモート演劇、オンラインだからこそ表現できることとは……


「オンライン演劇は、人と人の間にある「隔たり」を強調します。現実空間で行う従来の演劇とは違い、画面を越えて相手に触れることは出来ませんし、会話にも常に通信のラグが付きまとうからです。


これまで当たり前に成立していたコミュニケーションに多くの制限がかかった環境は、物語を構築する際の制約にもなりますが、それでも誰かとつながりたい、わかりあいたいという人間の普遍的な願いを際立たせる装置としても機能し、それが感動を呼ぶこともあると思っています。


まだオンライン上で発表した作品は多くはありませんが、表現できるものの幅にリアルであるかオンラインであるかはあまり関係ないような気がしています。そもそもリアル演劇にも制約は数多くあり、それを「見立て」など、想像力でもって乗り越えようとすることが演劇の面白さの核心だと思うからです。


もちろんブルーライトに嫌気がさし、暗転した劇場の完全な暗闇を恋しく思うこともあります。それでももうしばらくは、「オンライン」という少し作りが変わった劇場での演劇表現を追求していくつもりです。


(主宰 小御門優一郎)


……2020年10月以降の公演の予定について……


次回公演を上演予定です。詳細は10月頃公開予定ですので、ぜひHPなどでご確認ください!


劇団ノーミーツHP:https://nomeets2020.studio.site/ 


 


●劇団テレワーク


リモート演劇


コンテンツスタジオCHOCOLATE Inc. の手がける劇団テレワーク。今年の4月に行った0回公演では、企画・稽古・公演、さらにはオーディションにいたるまでをオンライン上で完結させたことで話題となり、コロナ禍で楽しめるコンテンツとして「オンライン演劇」というひとつの大きなムーブメントを生み出した。
8月で劇団としての一区切りをつけたものの、企画・稽古・公演、さらにはオーディションにいたるまでZoom上で行うことで話題を呼んだ。これまでもユニークな作品作りを行ってきたCHOCOLATE Inc.は、遠隔での演劇表現をどう捉えたのか。
CCOの栗林和明さんにお話を伺った。


……リモート演劇、オンラインだからこそ表現できたこと……


「オンライン表現の最大の可能性は、余白だと感じました。
画面のどこかにチャット欄があれば、そこで誰かと観ながら意見を交わせる。
その意見も含めてコンテンツになる。
物語自体に余白を作れば、参加者自体がその物語を選択することもできるし、時には演者側にだってなれます。
もちろん、物理的な空間がないことで作れない臨場感もありますが、余白をうまく活用することで生まれる没入感があると感じました。


今年の4月に立ち上げて公演を重ねてきた「劇団テレワーク」としての活動は現在一区切りがついていますが、僕らが今後作品を作っていく時も、この余白をいかにつくり、いかに参加したり没入してもらえるか、という視点は、常に活用できるチャンスだと考えています。」


(CHOCOLATE Inc. CCO/企画屋 栗林和明)


「劇団テレワーク」YouTubeアカウント:https://www.youtube.com/channel/UCimC2eyOCbiUaa79A5GF7UQ

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