地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。今回対談させていただいたのは、女性誌『ar』編集長の足立春奈さん。仕事が大好きで没頭していた日々から一転、難病になり入院。「毎日泣くほどツラかった」日々を支えたのは、家族や周囲の人々、そして仕事でした。現在は、編集長として、1児の母として、パワフルに自分の好きな道を突き進んでいます。その原動力や日々の暮らしについてお聞きしました。
RULE2. オンとオフは切り替えない
RULE3. 人の力を借りる
Profile
ar編集長・足立春奈さん
あだち・はるな 1985年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、新卒で2008年主婦と生活社に入社。JUNON編集部で編集者としてのキャリアをスタートさせる。2012年ar編集部に異動。Webディレクターも経験しながら、2019年12月より社内最年少の同誌編集長に。5歳男児の母としての顔も持つ。
難病発症で人生のどん底を味わうも、母の言葉で仕事復帰
フェムテックtv:編集の仕事は休みもなければ、徹夜も多い印象です。
足立さん:しょっちゅうしていましたね。会社に2連泊して近所の銭湯に通っていたことも。会社の警備員の方には「いい加減、帰ったほうがいいです」と言われたこともあります(笑)。だけど29歳のときに体を壊して以来、無茶な仕事の仕方はやめました。“ネフローゼ症候群”という難病で、3カ月間入院したんです。そのとき“代われない仕事なんてないんだ”と思い、仕事のスタンスが一気に変わりました。
フェムテックtv:念願だったar編集部で働き始めて、数年後のことですよね。焦りはなかったのでしょうか?
足立さん:人生でいちばんどん底。“終わったな、私のキャリア……”と思いました。いきなり病院の大部屋で人と過ごすこともストレスだし、これから仕事に復帰できるかもわからない。病院の先生からは「ストレスがかかる仕事は、辞めるに越したことはない」と言われていたんです。
ただ母は「ずっといまの仕事がしたくて出版社に入ったのも知っている。あなたにとって仕事を辞めることの方がかえってストレスになると思う。たとえ大変でも、病気と寄り添って働いたほうが豊かな人生になるはず」と言ったんですね。確かにそうだなと。退院後、30代は病気と併走して働きました。
フェムテックtv:30歳のときに結婚。ライフステージが変わっていきましたよね。
足立さん:結婚して恋愛に煩わされることもなくなり仕事に邁進するようになったら、我ながら上り調子になりました。20代のときって、人のペースに合わせて仕事しなくちゃいけなかったんですよね。企画が通らなきゃ帰れないし、自分の強みもわからない。外部スタッフさんたちからも舐められている気になるというか、まだまだ新人扱い。それが30代になったら、自分のペースで仕事ができるようになりました。締め切りをすっぽかされるとか、意図をくんでくれない、みたいなことはなくなった気がします(笑)。
“いつかできたらいいな”ではできないと産婦人科に通い、妊活スタート
フェムテックtv:怒濤の日々ですが、さらに翌年に副編集長に昇進、同年に編集長になっていまに至ります。現在の1日のスケジュールを教えてください。
足立さん:7時半に起きてご飯の準備などをして、8時半に夫が子どもを保育園へ。そこから自分の準備をして編集部に行き、17時半には退社します。最近は息子がサッカーにハマっているので、暗闇の中で1時間ほど一緒にやるか見守って、帰宅してから夕飯づくり。息子の習い事をチェックして、お風呂に入らせて、寝かせ終わるのが22時頃です。私も23時には寝ています。以前、ホルモンバランスがガタガタのときに産婦人科の先生に取材したら「絶対に23時に寝てください」と言われて。実践したら、本当に整ったんです。20代のときより、今のほうが元気かもしれないですね。
フェムテックtv:どんなに忙しくても、睡眠は大事ですよね。日々の暮らしの中で、リラックスする時間はありますか?
足立さん:唯一、私が編集者に向いている生まれ持ったポテンシャルだと思うところが、ゆっくりする時間、ボーッとする時間は、1ミリもいらないと思うこと。その時間があるなら、寝ます。それくらい、オンとオフを切り替える時間はいらないんですよね。テレビなどもほとんど観ないので、インプットはもっぱら人に会って話を聞くことですね。
ただゴルフにはハマっていて、月1くらいでコースを回っています。いまのスコアは110くらいですが、1回でもいいボールが打てたら、それが私の実力だと思うんですよ。“次はもっと出るはずだ!”って。負けず嫌いなんだと思います。血気盛んなのを静めるにはちょうどいい時間なのかもしれません(笑)。
子育てもそう。うちは夫と私で、1日おきにワンオペ交代制にしています。一人で育てようとしない。夫が育児をしている時間は口を出さず全部任せる。変な罪悪感を持たないのも大事だなと思います。“お迎え遅くなってかわいそう”とか後ろめたい気持ちで働くより、せっかくなら、前向きに働きたい。将来、子どもが「仕事行きたくない~」なんて思いながら仕事してほしくないですからね。“お母さんは好きでこの仕事をしているんだよ”というスタンスでいます。
産むこと、働くこと……自分の軸にあることを、メディアを通して発信したい
フェムテックtv:“気になることがあったら病院へ行く”のは、ご自身の病気の経験も大きいのでしょうか?
足立さん:そうですね。ネフローゼ症候群ってむくみが発症する病気なんですが、太ったのかなと思って病院じゃなくてしばらくキックボクシングに行ってたんですよ。そうこうしているうちに1日で(体重が)5kgくらい増えて、これはヤバイと思い、町の病院へ。「うちでは治療できない」と総合病院、さらに大学病院へ移され、即入院でしたからね。
フェムテックtv:病気を曖昧にさせてはいけないですね。ちなみにフェムケアについての企画の反響は、いかがでしたか?
足立さん:生理に関してはアンケートの戻りもいいですし、吸水ショーツなども好意的に受け止められているなと感じます。主な読者層は20代ですが、妊活に関してはまだまだ他人事のような気もしますね。
フェムテックtv:足立さん自身が愛用しているフェムケアアイテムはありますか?
足立さん:吸水ショーツですね。3日目くらいから自由になるし、ナプキンの煩わしさから解放されるし、何より産後の尿漏れにもいい。骨盤底筋の衰えは、産後の体でいちばん変わった部分かもしれないです。
フェムテックtv:確かに生理だけでなく、産後の尿漏れ対策にもいいですね。そのほかに、フェムケアで注目しているトピックスはありますか?
足立さん:AMH検査(卵巣予備能検査)です。二人目の子どもがほしいと思っているのですが、いまがいちばんキャリアに迷っているんですね。編集長だし、だけどタイムリミットも迫っているからそんなことも言っていられないし……。卵子の数を知った上で計画を立てなければと思っています。
“妊娠ロマンティック主義”のようなものは、もうやめたほうがいい。二人が愛し合った先に妊娠するのが理想じゃなくて、いろんな形の妊娠があるのが当然という前提があれば、少し変わってくるのかもしれないと思いますね。
フェムテックtv:向き合わなければいけないことが、たくさんありますよね。足立さんは、今後どんなライフプランを描いていますか?
足立さん:一生仕事はしていたいなと思います。それが編集の仕事ではないかもしれないけれど、何かを発信して誰かのためになることはしていきたい。4月から30代女性向けのフェムケアサイトを立ち上げる予定ですが、自分のライフステージに寄り添うものをつくるのはすごく楽しいです。20代の頃は彼氏からLINEの返事がないことに悩んで、それを誌面づくりに反映するとか、それはそれで楽しかったんですけどね(笑)。
サイトを立ち上げるにあたって「子供を産んで働くことが不安だ」といったような声を多く聞くようになりました。まずはそんな不安を持った女性が少しでも減るよう、情報を発信していきたいと思っています。
フェムテックtv
株式会社ツインプラネットが運営するフェムテック情報共有サイト。《毎日をイキイキと、自分らしく過ごす》ため、《自分のカラダについての“知らなかった”をなくす》ことを目的に、女性の健康に関するコンテンツを公開しています。