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サスティナビリティ

特集 | 地域をつくるローカルデザイン集

太田章彦さんが選ぶ「マルチワーク×ローカルデザインのアイデア本5冊」

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人が働き方を設計することを“デザイン”ととらえてみます。さまざまな仕事を組み合わせた組織横断的な複業スタイルを「マルチワーク」といいます。自身もマルチワーカーで、マルチワーカーを派遣する『海士町複業協同組合』事務局長の太田章彦さんに、働き方を考えるときに読む本を選んでいただきました。

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(左から)1. PERSONA / 2. サンカーラ ─この世の断片をたぐり寄せて
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(左から)3. 楽土紀伊半島 / 4. 深夜特急 / 5. 神菜、頭をよくしてあげよう
目次

太田章彦さんが選ぶ、マルチワーク×ローカルデザインのアイデア本5冊

マルチワークとは、季節や時間によってさまざまな仕事を組み合わせる働き方です。僕のマルチワークの始まりは、写真を撮るために祖父母が住む限界集落で暮らした時。地域の人たちとのつながりをつくるために、ごみ収集や飲食業など複数の仕事を組み合わせて働いていました。

その後、地方創生やまちづくりを作品にしたいと思って島根県・海士町へ移住しました。写真を撮りたい、地域を知りたいという僕に、海士町観光協会の当時の事務局長が、春は岩牡蠣の出荷、夏は宿泊業、秋は海産物の冷凍処理、冬はナマコの出荷といった繁忙期の現場を巡るような働き方を紹介してくれたのです。

マルチワークという働き方を選んだ僕の背中を押してくれたのが、写真家・鬼海弘雄さんの写真集『PERS
ONA』です。市井の人々のポートレート集で、鬼海さんも写真家として大成するまでにトラックの運転手やマグロの遠洋漁業など、いろいろな仕事をしていて、その多様な経験と培われた価値観の着地点が、この写真集だと思っています。「(そんな働き方で)大丈夫か」と言われ、不安になったときにこの本はその気持ちをやわらげてくれました。

「繁忙期に人手は欲しいが、通年で雇う余裕はない」という企業が、地方には多いと思います。必要な時期に必要な人材を派遣する海士町の一つの働き方を知った国が動き、マルチワークを可能にする「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」が2020年に制定されました。翌年、海士町では全国に先駆けて『海士町複業協同組合』が発足しました。組合では働き先との調整などをしていて、現在6人のマルチワーカーのサポートとして入っています。

マルチワークはそれ自体が目的ではなく、自分がどう働き、どう生きていくのか、いわば人生をデザインする一つの手段。協同組合では、マルチワークの事例を集め、今後に生かしていきたいと思っています。

とはいっても、マルチワークはまだまだ新しい働き方。理解されないことが多々あります。だから、くじけそうになったときに読むといいと思うのが『サンカーラ』。東日本大震災の翌年に出た小説です。大災害は大変なことだけれど、自分にとっては目の前にいる義理の両親の世話をすることの優先順位のほうが高い、ということが鋭利な言葉で語られています。働き方の優先順位も人それぞれ。自分の中にある信念を貫いていいと力をもらいました。

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おおた・あきひこ●1989年、島根県生まれ。写真家として活動するなか、2013年、海士町に移住。観光協会でマルチワーカーという働き方を実践。21年、“働き方をデザインする”をコンセプトに設立された『海士町複業協同組合』の事務局長を務める。
記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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