都会で災害に遭ったときと、移住先の田舎で災害に遭ったときでは、防災に必要なものが少し異なると思う。学生のとき地元で阪神・淡路大震災を体験し、千葉県に移住して2カ月で東日本大震災に遭い、家を購入すれば台風で屋根を飛ばされ、令和元年房総半島台風では9日間の停電を体験した。田舎だからこそ必要で、田舎だからこそできる私なりの防災と、災害に遭ってしまったときの対応を紹介する。
目次
ある日突然、家の屋根の一面がまるまる飛んでしまったら、あなたはどうする?
茅葺き屋根にトタンを被せた、いわゆる古民家に私は住んでいる。この家を購入した翌年、夜に風が吹き荒れ、家自体がガタガタと音を立て、外でもいろいろな物が飛ばされている音が鳴り響いていた。夜明けを待ち、外で目にしたものは、トタン屋根がなくなって茅が丸出しになっているわが家。土間で仰げば、空が見えた。
そんなとき、あなたはまず何をするべきか。
「飛び散ったものを早く片付けなくては!」と急いで片付けに奔走する前に、まずこの現状をきちんと写真に納めておこう。罹災(りさい)証明書や、必要な手続きをする際、現状を報告できる写真があると一目瞭然だ。
次に、役場へ駆けこむ前に居住地区の区長に相談してみよう。地域によるかもしれないが、区長を通して報告した方がスムーズにことが運ぶようだ。わが家の場合、区長自ら現状写真を撮りに来て役場と協議会に報告してくれた。何かあったときはまず、地域の人に報告、連絡、相談することをお勧めしたい。
停電に備える
防災グッズの中に、懐中電灯を備えている人は多いだろう。もちろん、懐中電灯は役立つが、片手がふさがれてしまうため、9日間の停電時はランタンを欲する人が多かった。ランタンがあれば両手を使って料理をしたり、家族団らんしたりもできる。私は懐中電灯、ヘッドライト、電池で使える小さめのランタンと、大きめの灯油ランプ、そして大小さまざまなキャンドルを常備している。灯油ランプやキャンドルの使用は火災の原因になる可能性があるので、住環境や家族環境で使用を判断してほしい。
停電中に活躍したのは、車のシガーソケットに差して使えるUSB充電器だ。車で出かける際、このUSB充電器で携帯を充電することができた。
停電により休業するガソリンスタンド(以下GS)が多く、営業しているGSに客が集中してガソリンが不足。GSでは長蛇の列ができ、給油制限も行われていたようだが、ふだんからこまめにガソリンを補充していたこと、携行缶に非常用ガソリンを常備していたことが役だった。
発電機を使う人もいたが、発電機に必要なガソリンを入手するのに苦労していたようだ。ガソリンを使う発電機は騒音がひどく、それがストレスにもなる。停電が長引くと、持ち運びできるソーラーパネル発電セットの支援や、電気自動車で電気を供給する支援が活躍し始めた。騒音によるストレスなく、電気を得られる手段は有難い。
停電が続くなか店の営業を再開している店舗では、電子マネーもカード払いも使えない。使えるのは現金のみだ。ある程度の現金は手元に置いておくようにしよう。炊飯器や電気調理器をふだん使いしている人にお勧めしたいのは、「電気を使わない日」もしくは「電気を使わないランチ」などを意識てきに設けて、楽しみながら経験しておくことだ。一度やってみると、今の自分に必要なものが見えて備えることができるはず。
災害時の食材と料理
田舎では、米を自給している人がいる。そして、籾殻(もみがら)が付いた状態で保存する人もいる。その方が味が落ちないので、私も必要に応じて籾すりをしている。ところが、籾すり機は電気がなければ動かない。停電が続くなか籾すりした米が底をついてしまい「籾付きの米はたくさんあるのに自前の米を食べることができなかった」という話を耳にした。台風の時期は、多めに籾すりをして米を用意しておきたい。
プロパンガスは都市ガスに比べてガスが止まることは少ないが、最近はIHキッチンの家も増えているので、停電したときのためにカセットコンロを備えておこう。住環境によるが、七輪や練炭火鉢、ロケットストーブがあると暖もとれて料理もできるので便利だ。
断水に備える
断水になっていなくても電気で水をくみ上げている場合、停電とともに断水になる。「うちには井戸があるから安心」と思っていても、手押しのポンプでないと停電時は使えない。
断水になったときのために、近場で湧水がくめる場所を知っていると役立つ。湧水をくむ場合も、給水車から水を得る場合も、水を入れるタンクが必要だ。タンクがないときや、歩いて水を運ばなければいけないときに便利なのが、リュックサックとポリ袋を利用して運ぶ方法だ。
そこでお勧めなのが、「背負える給水袋」です。市販品もありますが、リュックサックの内側にゴミ袋を2枚重ねで入れるだけで自作できます。手で持つのと違って、これなら女性でも10ℓ、男性なら20ℓ以上の水を運べるでしょう。
令和元年房総半島台風を体験した西野弘章さんが、「被災体験で分かった! 2週間の自宅避難を乗り切る技術」を記したこの本は、日常でも使えるアイデアが満載。今からできることを行い、備えておくことをお勧めしたい。
写真:写真AC、鍋田ゆかり
文:鍋田ゆかり