自然豊かな里山暮らし。リモートワークの広まりもあり、都会から地方への移住を考える人が増えています。その中で注目されているのが、都会からほどよい距離にあり、クルマで行き来できるような場所での暮らし。「SUBARU×里山life」体験会に参加し、千葉県鴨川市へ移住したり、2拠点生活を送る4人の拠点を巡りました。
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地方暮らしに欠かせないクルマ。里山暮らしに必要なことは?
かつて航空機をつくっていた『中島飛行機』をルーツにもち、レガシィなどで知られる自動車メーカー『SUBARU(スバル)』は、「より遠くまで、より快適に、より安全に」をモットーとする「グランドツーリング思想」のクルマづくりをしています。
そんなスバルがメディア向けに開催したのが「SUBARU×里山life」体験会。
日本では今、東京など都会から地方への移住に関心が高まっています。ただ、移住をしてもリモートワークを活用しながら今の勤務先に勤めたいと考える層は多く、また都会から完全に離れると仕事がうまくまわらない状況もあるようです。そこで人気となっているのが千葉県や埼玉県など、東京の近郊県です。
地方ではクルマは必須。山道や悪路もあります。また東京との行き来には高速道路も使います。雨の日も風の日もオールラウンドに対応できるのが、航空機譲りの安全性能と人にやさしい操縦性能を持ち、4輪駆動(AWD)を主軸にしたスバル車だと、実際に里山エリアで体感してもらい、移住者にも会って里山ライフの実際を聞いてもらおうという体験会でした。
移住者たちがBBQでお出迎えしてくれました
まずは東京・恵比寿にあるスバル本社から、首都高・東京湾アクアラインを通って南房総へ。試乗車はレガシィ アウトバックです。湾岸のドライブを楽しんだ後、到着したのは千葉県鴨川市の山あいにある『Hangar eight(ハンガーエイト)』でした。
ここは今年7月末にオープンしたばかりの、カフェやレストラン、イベント、キャンプスペースなどを備えた総合施設で、恵比寿から寄り道せずに来れば1時間半ほどの距離にあります。
ここでは薪火のBBQコンロで焼かれた自家製・イノシシ肉の生ソーセージと約20種のハーブサラダ、自家栽培のライ麦入りカンパーニュでおもてなしを受けました。
「ソーセージとハーブをパンに挟んで食べてみて!」と言ってくれたのは、オーストラリア出身で現在は鴨川に住むヘイミッシュ・マーフィーさん。2000年代から鴨川に通い、別荘を建て、その後移住をした方です。今年、『嶺岡ジビエ』の名称でジビエ肉の解体施設をオープンし、ジビエ肉やジビエソーセージの加工販売をしています。
ヘイミッシュさんの隣には、ハーブの生産者である『苗目』代表の井上隆太郎さん、ライ麦入りのカンパーニュを焼いて持ってきてくれた『神向寺設計』代表の神向寺信二さんもいました。井上さんは東京からの移住者、神向寺さんは東京との2拠点生活をしている方です。
また、『Hangar eight』を運営する藤井照久さんも移住者です。
里山の恵みを活かし、自分たちでつくる暮らし
この夜にHangar eightで行われた懇親会、そして体験会2日目にはそれぞれの自宅や拠点に伺うことができ、鴨川での「里山ライフ」を教えてくれました。
まず藤井さんは自動車業界に長年身を置き、F1レースの世界なども経験してきた方です。2016年に自分の会社を鴨川市に移転し、自身も移住。20年ほど放置されていた山林と田んぼ、畑、約6000坪の敷地を新たに整備し、伐採した杉で小屋や倉庫なども建て、「モナカ公国」という“独立国”を名乗り、猫を“元首”に犬やヤギ、奥様とともに暮らしています。
ヘイミッシュさんは2012年、それまで27年間勤めていた金融業の仕事を辞め、鴨川市で持続可能なフィールドをつくるプロジェクトをスタート。道路も水道もない里山を開拓し、「食べられる森―Uzume―」や「森に佇む静かな貸別荘―Momiji―」などを造っていきました。そして今年、新たにジビエ加工施設を立ち上げました。
井上さんは東京で園芸業を経営した後、都内の消費社会、植物の扱いに疑問を感じるようになり2014年から鴨川市で畑作りを始めました。その後『苗目』を立ち上げ、現在はハーブとエディブルフラワー(食べられる花)の生産を中とした「栽培」、里山の環境再生をしながら、そこに生えている植物を採取し、加工またはそのままの形で販売する「採取」、飲食店や一般の方と作る「シェアファーム」の3本柱で仕事をしています。
神向寺さんの本業は建築設計です。2011年に鴨川市の大山千枚田の棚田オーナーになったことから鴨川に惚れ、土地を探し、セルフビルドでオフグリッド小屋を建てました。カマドや薪ストーブで調理をし、太陽光発電で電気を、太陽熱温水器で温水シャワーを使っています。トイレはコンポストトイレです。「都会では衣食住すべてをお金で購入する、つまり『外注』だけで自分の生活が成り立っていることに居心地の悪さを感じ、少しでも自力でできることを増やしたい」という思いでこの小屋を建てたそうです。
この4名のみなさんに共通していたのは、里山の恵みを活かし、必要なものは自分自身や仲間に手伝ってもらってつくるということ、そして不便さや非効率さも含めた暮らしそのものを楽しむ姿勢でした。
また一方で、それぞれの仕事の関係先などとして東京とのつながりは持ち続けています。また、東京などから友人や仲間も遊びにきます。「モナカ公国」には年間2000人もやって来るそうです。
スバルも里山を整備し、スタジオづくり
そして、スバルはそんな里山暮らしや里山との2拠点生活の頼れる“相棒”になれると確信しているそうです。
SUBARU広報部の栗原健蔵さんは「鴨川で暮らすみなさんは、自然の中でいろいろな体験をされています。スバルは独自の『総合安全思想』を持って、クルマづくりをしています。自然の中でもいかに安全に愉しめるかをスバルはずっと追い求めてきました。その両者はやはり親和性が高いと思います」と話してくれました。
また、「SUBARU広報部自体も鴨川との関係を持っています」と教えてくれました。それが『SUBARU里山スタジオ』です。鴨川市の山中にある元県営キャンプ場敷地を借り受け、クルマの使用シーンを想起させる撮影や試乗ができる取材拠点として活用しています。広さは東京ドーム2個分、昨年8月にオープンしました。
歴史を遡れば平安時代に馬の放牧がされていたり、愛宕神社の祠があるなど、昔から人の手が入った山でした。キャンプ場の閉設後は草木で荒れている状況でしたが、社員らが草刈りなどに入り、光が入る場所になったそうです。スバルもまた、ただクルマを製造し、販売するだけではない、地域との共生に取り組んでいます。
運転する時間を「楽しむ」ということ
2日間の体験会が終了し、また1時間半ほどの運転で恵比寿まで戻りました。
比較的交通量が少なく、ゆったり運転できたこともあり、2日間の体験を思い返す、思索の時間となりました。安定感のある走りに、安全運転をサポートしてくれる「アイサイト」や「アイサイトX」もあって、居心地のいいオフィスで集中した考え事ができたような気分になりました。
ヘイミッシュさんも移住前に東京と鴨川を行き来していたとき、マイカーとしてレガシィに乗っていたそうです。そのときの運転は「ただの移動の時間ではなく、それは『楽しむ』時間でしたよ」と言っていたことも思い出しました。
クルマが“相棒”になる。そのことを実感した2日間でもありました。
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https://www.subaru.jp/
photographs & text by Takeshi Konishi