「食と体験のテーマパーク」をコンセプトに掲げ、2024年2月、館山市にオープンした「道の駅グリーンファーム館山」。どんなお店があって、どんな商品が販売されているのか、現地在住ライターが実際に訪れ、出店者さんや出荷している人たちから生の声をお届けします。
館山市では2番目、南房総エリア(※)では13番目の道の駅
※南房総エリア:南房総市、館山市、鴨川市、鋸南町
生活圏内に多くの道の駅がある南房総エリア。全国的に見ても道の駅が多い地域かと思っていましたが、国土交通省のサイトによると、一番多いのは北海道で127駅でした。2番目は岐阜県の56駅、3番目は長野県の54駅。31駅~40駅ある都道府県は7つあって、千葉県はそこまで突出して多いわけではないようです。
それでも、地域活性化への期待も含め、新たな道の駅がオープンするということで盛り上がる南房総エリア。館山市のどこにオープンしたのかというと、国道128号稲交差点寄りの安房グリーンライン沿いで、富浦インターチェンジから車で15分ほどの場所です。
「グリーンファーム館山」の名称は、一般から募集して選ばれたもの。地元利用者や観光客の利便性を考えて、「九重(ここのえ)駅前郵便局」がグリーンファーム館山の敷地内に移転したり、地元の幼稚園児が敷地内にサクラの木を植樹したりと、オープン前から地域の人たちの期待の高さがうかがえました。
ジビエにクジラ、ここでしか買えないオリジナル商品も
駅内の農産物売り場では、旬のイチゴがずらり。冷蔵コーナーには地ビールに「ノンホモジナイズ乳(ノンホモ牛乳)」やチーズ、クジラのベーコンやジビエ肉がところ狭しと並んでいます。
南房総エリアで捕れるイノシシ肉は、ドングリを食べて育っているため、イベリコ豚のような甘みのある脂身が特徴です。安心・安全・美味しいをテーマにジビエを販売している、「館山ジビエセンター(TGC)」の豊富な商品を手にすることができます。
「スライス肉は2ミリと5ミリがあり、厚みによって鍋や焼き肉で。ミンチ肉はハンバーグやボロネーゼパスタに。ブロック肉は各部位とり揃えています」と話すのは、ジビエセンター代表の沖浩志さん。
もっと手軽にジビエを味わいたいなら、味付け肉がおすすめです。スライスに味付けしたみそ味・塩ニンニク味・うま辛味や、ミンチに味付けしたつくね串・ミニバーグなどがあり、南房総の郷土料理である“さんが焼き”をオマージュした“山さんが焼き”もおすすめだそうです。
ジビエ肉だけでなく、ジビエレザーの商品も並んでいます。産業廃棄物となってしまう皮を活用したジビエレザー製品を出品しているのは、「伝右衛門製革所(でんえもんせいかくじょ)」の大阪谷未久さんです。
「田畑を守るために駆除された野生動物を活用したジビエ。そのジビエからさらに産業廃棄物となるのが皮。その皮を活用するのがジビエレザーです。革製品から豊かな南房総の自然と、同時に里山に起こっているさまざまなことを知ってもらえるとうれしいです」と大阪谷さんはいいます。
「キョン革のコードクリップ」の手触りは、想像を絶する柔らかさです。この商品は、千葉県で大量に繁殖しているキョンの革の触り心地のよさと、特定外来生物の問題について手軽に、楽しみながら知ってもらえるように開発されました。「ミニイノシシてづくりキット」や、「ジビエレザーシール」など、なかなかお目にかかれないセンスある商品を手にすることができます。
ワクワクをおすそ分け!
ソトコト・ショートムービー
館山市で4代続く須藤牧場が、ここでしか味わえない感動体験を提供
今年2月、「第1回ちばガストロノミーAWARD(アワード)」生産者部門で大賞に輝いた須藤牧場の直営店もあります。代表の須藤健太さんに、出店の想いを伺いました。
「私たちの出店の最大の想いは、『地元のよさを再発見し、多くの人々に伝えたい』ということです。新鮮なミルクと、館山市の農産物をミキシングして、ここでしか味わえない感動体験を提供いたします」
2019年から毎年夏に開催している「生シェイク祭り」を主催し、参加店舗は毎年増える人気ぶりです。須藤さんから来場者へ、コメントをいただきました。
「館山市の放牧場でのびのび育ったジャージー牛のミルクを、自社で丁寧に加工し、ソフトクリームや生シェイクを提供しています。フレッシュな味わいと、濃厚なミルキーさが特徴です。市内の魅力あふれる農産物とのコラボにより、皆さまへ館山の豊かさをお伝えできるよう頑張ります!」
食事は「のうえんカフェ 館山」か「TATEYAMA BURGER」で
袖ケ浦で、行列のできるお店として人気の「のうえんカフェ」が、南房総に初上陸。地元野菜やジビエを使った、ボリューミーな食事や、昔ながらのプリンなど、スイーツも提供しています。
「TATEYAMA BURGER」は、地元パン屋のバンズとジビエを使ったハンバーガーを提供。ポテトはカリカリのサクサクで、手が止まりませんでした。
テイクアウト商品は、敷地内にたくさん設置されている屋外テーブルや、2階にあるテラスでも食べられます。
この屋外テーブルは、南房総市に工房を構える「家具工房つなぎ」の中田洋之さんが作成したものです。その数は36台! ぐらつかないよう、貫(テーブルの下にある構造材)に欠き込みをほどこし、コーナーをカットして、テーブル面や座面の周囲を面取りするなど、道の駅利用者へ配慮してつくられています。
山桜の家具をつくる際、どうしても出てしまう端材を活用し、「食の体験施設」というグリーンファーム館山のコンセプトに合わせて、カッティングボードや箸置き、カトラリー置きなどを中心に出品しています。端材をいかし、一つ一つ形が違うのが「家具工房つなぎ」の売りですが、今回定型も作成しました。それでも、色や形が微妙に違っていて、木目の表情もそれぞれ異なるのが魅力であり、選ぶ楽しみでもあります。
「山桜は堅さや粘りに加え、木肌の滑らかさが特筆すべき点です。売り場にサンプルも置いてあるので、お客さまにはぜひその感触に触れていただきたいと思っています。そのほかマテバシイ材の商品も少しあり、地元材ももっと積極的に使っていきたいと思っています」と、中田さん。今後はお箸やへらなども制作・出品予定とのことです。
車で5分。「Calf Hatch Yohyo(カーフハッチヨーヨ)」もおすすめ
筆者は平日に二度ほどグリーンファーム館山を訪れましたが、平日にもかかわらず多くの人でにぎわっており、「のうえんカフェ」の受け付けをすると20組以上の待ち人が。もちろん、グリーンファーム館山内で時間をつぶすのもいいですが、長い待ち時間を有意義に過ごすなら、車で5分の距離にある須藤牧場内のカフェ「Calf Hatch Yohyo」を訪れてみてはいかがでしょうか?
牛や看板犬の“チェリー”が迎えてくれ、のんびり過ごすことができます。のうえんカフェの受付を済ませておけば、順番が近づいてきたらお知らせの電話があるので、それから戻っても問題なく間に合いました。
道の駅グリーンファーム館山に期待すること
グランドオープンを迎えた日は、「館山ジビエ」のキッチンカーなどが4台、「白浜豆腐工房」や地元のガラス作家などの店が7店ほど出店したマルシェが開かれました。出店者からは、「出店者とのつながりを考えて前向きにマルシェを開催させてくれたので、今後が楽しみ」という声がありました。
「伝右衛門製革所」の大阪谷さんは、「ただ製品を置くだけではなく、地元の人や観光客がその製品をきっかけに、館山の地域や自然にまで興味をもてるような仕掛けや、体験の仕組みの実現を期待しています」と話し、須藤牧場の須藤さんは、「“体験”は移り変わります。これからの時代を象徴する農業体験へともに挑戦できたら嬉しいです」などと、誰もが自分たちのまちに新しくできた道の駅グリーンファーム館山に期待し、ともにがんばっていきたいと思っているのが伝わってきました。
まだオープンしたてで、芝生も収穫体験ができる畑も緑より土の色が目立つ状態ですが、今のグリーンファーム館山がどのように変化し、みんなに愛される道の駅へと成長していくのか楽しみです。オープンしたての今を体験しに、変化を確認しに、どうぞ何度でも足を運んでみてください。
■取材協力
道の駅グリーンファーム館山:https://greenfarm-tateyama.com/
館山ジビエ:https://tateyama-gibier.jp/
伝右衛門製革所:https://www.instagram.com/awa_gibier.leather
須藤牧場:https://www.sudo-farm.com/
家具工房つなぎ:https://www.tsunagi-kagu.com/
マルシェ出店者のみなさま
※順不動
写真:道の駅グリーンファーム館山、館山ジビエ、伝右衛門製革所、須藤牧場、家具工房つなぎ、鍋田ゆかり
※順不動
文:鍋田ゆかり