東京の印刷会社でサラリーマンをしていた新井 聡(あらい さとし)さん(51歳)は、2014年に家族で北海道・美瑛へ移住し新規就農、「あらいふぁーむ」を立ち上げました。今では農薬や化学肥料を使わず、ニンニクやビーツを中心にさまざまな野菜を栽培し、評価を得ている新井さんですが、ここに至るまでは多くの苦労も経験されています。数多の困難を乗り越え、いかにして移住からの新規就農、野菜のブランド化や製品化に成功したのか、お話をうかがいました。
大好きなまちで、憧れの仕事で、 人のためになることがしたい
新井さん: 北海道で農家をやってみたいという思いは、会社員の頃からずっとありました。東日本大震災で原発の事故があり、生活する上で様々なことが心配だったので妻と子どもは先に移住させたんです。北海道で農家をすると決めていましたから。家族で北海道旅行をしたときに広大な土地と自然を目にし、農業をするなら美瑛町だと思っていました。」
北海道に親戚や友人、知人はいなかった新井さん。大好きな場所でありつつも、心細さや不安も感じるだろう土地で、それでも「農業を始めよう!」という情熱は、なぜ生まれたのでしょうか。
新井さん:東京でサラリーマンをしていた頃、周りに病気を抱えている方が何人もいたんです。彼らを見て、おいしくて健康的な野菜があれば、少しでも元気になってもらえるのはないか。だから、農薬や化学肥料を使わない野菜づくりができたら、と思ったんです。
移住後に直面した新規就農のむずかしさ
経営が軌道に乗りつつある今では、ブランド野菜やコラボ商品の開発など、こだわりの野菜を知ってもらう活動も本格的にスタートさせています。
移住と就農で得た仕事、出会いと生きがい
同時に「あらいふぁーむ」では、生産物を使った加工品のプロデュースや販路開拓も進めています。
おいしく身体にいい「ダイヤモンドにんにく」のブランド化
これを2週間かけて熟成させたのが「ブラックダイヤモンドにんにく」です。アルギニン・ポリフェノールなどをはじめとした栄養を豊富に含んだスーパーフードで、ゆっくりと日数をかけて熟成させたため、生のにんにくとは全く別物。そのまま食べられます。にんにく独特の匂いがありません。匂わないのでデートの前に食べても大丈夫です(笑)
この「ブラックダイヤモンドにんにく」、筆者も食べてみました。
ドライフルーツに似たフルーティーな味わいが食べやすく、ブドウのような甘酸っぱさを感じます。ニンニク特有の気になる匂いはありません。
このニンニクに着目したのが札幌市にある『にんにく専門店 にんにく種蔵(しゅぞう)』。イタリアで修業したオーナーが美瑛町で新井さんと出会い、おいしいニンニクと出合いました。これがきっかけで、ニンニクのブランド化プロジェクトがスタート。「ダイヤモンドにんにく」という名前は、手間暇かけて小ロッドでしか作れない希少なニンニクという特性に由来しています。
札幌市内の狸小路にある店舗では、「ダイヤモンドにんにく」を使った加工品の販売や立吞みでのおつまみ提供、ネット販売をしています。プロの料理人にも見染められる「ダイヤモンドにんにく」を通して、今も多くの出会いが生まれていると新井さんは話します。
ビーツと米糀のコラボにも注目
カラフルなフルーツや野菜を使ったメニューのなかで、ひときわ鮮やかで目を惹くのが新井さんのビーツを使った「レッドコージー」。米糀甘酒、ビーツ、リンゴ、パイン、ニンジンをスロージューサーにかけます。熱に弱い酵素や栄養価を損なわずに摂取できるスーパーフードドリンクです。(※提供時期はビーツがあるときだけです)
移住して、農家になって、思うことは?
話を聞いてみて、新井さんのエネルギー源は、人との出会いや関わりから生まれる「誰かの喜び」だと感じられました。