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出会いは島婚活。福岡ー対馬 海を渡る遠距離恋愛で2人の心を繋いだものとは

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遠距離恋愛というと、交際を続けるうちにどちらかが就職や転勤で離れる場合が多いが、交際スタートから遠距離恋愛というパターンもある。福岡市在住の和田奈央子さんの場合がそうだ。長崎県対馬市を訪れた際に出会った夫とは、遠距離恋愛から交際をスタートし、1年を経て結婚。海を隔てた遠距離恋愛ならではのエピソードを取材した。

結婚式
和田さんは福岡ー対馬間での遠距離恋愛の末、2013年に結婚。写真は2014年の結婚式の様子。(c)中尾菜海
目次

対馬の婚活イベントが出会い。台風が2人を近づけた

出会いは2012年9月、和田さんが28歳の時。福岡市のフリーペーパー編集部で広告プランナーとして働いていた和田さんが、入社6年目で仕事の面白さを感じていた頃だ。一方で入社当時から同僚などに話していた「25歳までに結婚する!」という人生プランからは3年が過ぎ、仕事も遊びも充実した毎日を送っていたが交際相手は数年おらず、少々焦っていたという。

その頃、仕事では対馬市に観光PRを提案する担当者として、フリーペーパーの読者を集めたモニターツアーの企画などを行っていた。ある時、対馬市で1泊2日の婚活イベントが開催されることを知り、友人と2人で参加することに。

和田さん「これは正直、出会いというより仕事の一環というか、対馬のことを知るチャンス!と思って参加したんです(笑)」

婚活イベント自体には特に気負わず参加していた和田さん、「気になる相手」を書いて提出するカードにも特に誰も書かなかったそうだが、対馬で働く会社員の男性が、和田さんの名前を書いていた。これが後に夫となる人とは思いもよらなかったという。

和田さん「この時は良い人そうだなーくらいの印象で、一緒に参加した友人に良いかもな、と思ったりもしてみんなで連絡先を交換しました」

翌日は友人を含めた3人で、彼の車で対馬市内を観光。楽しく過ごしていたが、いざ帰福しようとしたらなんと台風の影響で飛行機が欠航し、さらに1泊することに。想定外に追加された1日だったが、再度彼が観光地を案内してくれたという。

対馬
2012年9月、出会いの場となった長崎県対馬にて。和多都美神社は縁結びのパワースポットとして知られている。(c)和田奈央子

告白は福岡で。5歳年下の彼、ベタだけど心に響いた直球なアプローチ

対馬での出会いから約1ヵ月。福岡県に実家がある彼が帰福したタイミングに3人で遊んだ後、「次は2人で会いたい」と彼から誘われる。和田さんも少しずつ気持ちが傾いていた頃で、友人の後押しもあり次は福岡でデートすることに。

和田さん「彼がデートプランをしっかり考えてくれていて。若かったのもあると思うんですが、能古島行って福岡タワー登って、食事はワイン居酒屋を予約してくれてて、最後は百道浜を散歩しつつ告白っていう、学生みたいなベタなコースなんですけど(笑)、これが久々に新鮮で楽しくて。一所懸命考えてくれたのも嬉しかったですね」

和田さんは仕事柄、福岡の飲食店に関しては情報通だったし年齢的にも行き慣れていたが、まだ社会人2〜3年目の彼が精一杯考えてくれた”定番デート”と真摯な告白が、和田さんの心を掴んだ。

和田さん「とにかく真面目で優しいし、28歳の私を好きになってくれてありがとうって感じでした(笑)」

百道浜
福岡市の定番デートスポット・百道浜で告白された。(c)福岡県観光連盟

ほぼ彼がフェリーで来福。最終便を逃したことも

こうして福岡ー対馬の遠距離恋愛をスタートさせた2人。彼がフェリーで福岡市に来ることが多く、月に2〜3回は訪れていたという。

和田さん「飛行機だと30分で着きますが片道1万円くらいするし、フェリーだと4000円くらいですから。でも台風が来たり高波だと欠航するので、彼はしょっちゅう天気予報をチェックしてました。台風の進路図に詳しくなってましたね(笑)」

週末の夜に彼が対馬からフェリーに乗って朝に博多港に着き、日曜の夜に博多港を出る便の船内で寝て、朝に対馬へ到着し会社へ出勤…という、若いからこそ可能なスケジュールをこなしていた彼。しかしある時、うっかり最終便を逃したことがあったそう。

和田さん「うちでちょっとゆっくりしてたら最終便の時間になってて、乗れなかったんです。その時は翌朝の飛行機で帰りました。出社時間にはちょっとだけ間に合わないので、会社に電話して病院に立ち寄ってから出社すると言ったみたいです。もう時効ですよね(笑)」

マリンワールド海の中道
彼と福岡市の「マリンワールド海の中道」へ。(c)和田奈央子

SNS普及前の遠距離恋愛、2人を繋いだものとは

まだSNSが日常的ではなく、毎日の電話で絆を深める

彼が頻繁に福岡へ通ったこともあり、なかなか会えずにケンカになるということはなかったそうだが、それでも2人の心が離れないよう、連絡はマメにとっていたという。しかも2012〜2013年当時、SNSはまだ日常的な連絡ツールではなく、主な連絡手段はメールか電話だった。

和田さん「ほぼ毎日電話してました。彼が掛けてきてくれることが多かったですが、私もかなり掛けてたと思います。SNSサービスの無料通話とかも無かったですから、通話料金を安く抑えるために携帯会社を変えたりもしましたね」

携帯イメージ
(c)写真AC

対馬でのこっそりデートがバレた!?

ある時、和田さんが仕事で対馬市のモニターツアーを企画し、対馬に行くことがあった。当時、取引先だった観光課など対馬市の仕事関係者には、島の婚活イベントで知り合った恋人がいることは言っていなかったという。

和田さん「必死に隠していたわけでもないんですがタイミングがわからず…でも仕事で対馬に行った時、時間ができたので彼に会いに行こうとしているところを対馬市の担当の方に見られまして、とっさに誤魔化しました(笑)」

後に結婚が決まってこの担当者にも報告したところ、大変喜んで結婚式には花が届いたのだとか。

和田さん「婚活イベントの主催をしていた市の担当の方も喜んでくださって、お祝いをいただきました。仕事でも大変お世話になりましたが、対馬の方は本当にみなさんあたたかいです」

万関橋
対馬市・万関橋 (c)九州観光推進機構

遠距離だからこそ”結婚”という目標が明確に

交際スタートから遠距離となった2人だが、むしろ遠距離でなかなか会えなかったからこそ、”結婚”を明確な目標にできたのかもしれないと和田さんは言う。出会いから含めてもそう長くはないが、彼との結婚を意識した理由は、自身の年齢はもちろんだが、ふとした時に感じた価値観の近さだった。

和田さん「誠実で優しいところも良かったけど、それだけだけじゃない、彼のちょっとダークな部分が感じられて、そのさじ加減も私と似ていたし、より身近に思えました」

夫婦や恋人同士の価値観が似ている例として「笑いのツボが同じ」ということはよく挙げられるが、特に長い人生を共にする結婚は、お互いの”ダークサイド”を認め合える関係性も大事なのかもしれない。

結婚を意識してからの和田さんは、「もう女が待つ時代ではない!」と、彼にも積極的に自分の気持ちを伝えていたという。

和田さん「30歳までには結婚したいと思ってましたし、私から『結婚する気はあるの?』とよく言ってました。広島の実家から親が来福した時には紹介したり。囲い込み作戦で押し切りましたね(笑)」

そして交際&遠距離恋愛スタートから丸1年が経った、2013年10月に入籍。生活はそのままで”遠距離婚”となったが、結婚式を終えた2014年4月の人事異動で彼の福岡転勤が決定、晴れて2人での生活が始まった。

結婚指輪
交際開始から1年後の2013年10月に入籍。(c)和田奈央子

いつか家族みんなで対馬に行きたい

そして現在、結婚から7年が過ぎた。2人の子供にも恵まれ、福岡市の映像制作会社に転職した和田さんは、このコロナ下でリモートワークと子育てに奮闘する日々だ。夫とはケンカもするが、毎年の結婚記念日には、出会った頃のように彼が店を予約してエスコートしてくれるという。

和田さん「いつかまた旅行できるようになったら、子供たちも一緒に対馬へ遊びに行きたいです」

福岡ー対馬。海を渡る遠距離恋愛の末に結ばれた2人。福岡で夫婦となり育んできた家族の絆は、遠く対馬の”縁結びの神様”がこの先もしっかりと見守ってくれることだろう。

対馬
対馬の朝日(c)和田奈央子

 

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