スケールの大小にかかわらず、地域の風景や歴史をランドスケープのデザインで守り、グリーンインフラを実装しながら流域の中で人と自然のつながりを取り戻すことが大事だと考える平賀さん。グリーンインフラについて理解するための5冊を選んでもらった。
平賀達也さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
グリーンインフラの概念をつかむのにおすすめしたいのは、『環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ』です。源流から海までが手つかずで残っている神奈川県の小網代地域を研究する岸由二さんが、解剖学者の養老孟司さんとの対談形式で流域思考とは何かを対談形式で語る本です。日本の川の流域にはそれぞれ異なる生き物の生息域があり、採れる作物なども違います。そのため「流域」というひとつの単位ごとに地域社会の特徴を見極めることができるので、自然がどのようにつながり、どう利用すれば負荷をかけずに済むかを実感として理解しやすい。実際、江戸時代は藩を流域ごとに区切っていて、それぞれの場所で採れる特産品を産業の中心に据えさせたという歴史もあったようです。日本に約300年平和が続いたのは、流域の特性をうまく活かしたからという理由もあったかもしれません。
『社会的共通資本』では、環境が社会と文化をつくり、その次に経済があることが簡潔に説明されています。SDGsの発想そのものですよね。経済成長一辺倒ではなく、持続可能性を考えるなら、やはり環境を整えることから始めないといけないとわかります。
『洪水と水害をとらえなおす 自然観の転換と川との共生』は、土木河川工学の第一人者による名著です。ここでは洪水は自然災害、水害は人の営みに伴う社会災害だと定義したうえで、それに向かい合うためには日本人が本来持っていた、「その地域ごとの自然とともに生きていく」という考え方を取り戻すべきだと語っています。専門的ですが、自然災害対策をきちんと学びたい方にはよい本です。
グリーンインフラの概念や思想から一歩進んで、ビジネスとしてどう活用していくかが書かれているのが、『決定版! グリーンインフラ』です。グリーンインフラはビジネスとも相性がいいですし、そもそも経済として回せないと持続可能にはなりません。自然災害の予測不可能性を軽減できたり、流域志向で地域に貢献することにもつなげられます。いろんな分野の専門家が集まった幕の内弁当のようなおもしろさがあります。