甲斐みのりさんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊
1冊目は、『町のけんきゅう』。この本では、商店街のショーケースやそこに陳列されているメニュー、お店の人の服装やまちを歩くおばあちゃんの靴など、何げない日常を観察して楽しみ、それをおすそ分けするように紹介しています。昔は「まちを楽しむ」といえば誰もが知る観光名所を巡ることであり、お土産には誰もが知るその土地の名物を選ぶことが多かったと思います。でも、いまは自分が好きだと思ったものを自由にお土産にしていいし、それが楽しい時代になりました。そのときに大事なのは、あらゆるものをおもしろがる姿勢ではないでしょうか。この本のようにまちを眺めて歩けば、そうした感覚が豊かになるはずです。
『作家のお菓子』は、谷崎潤一郎さんややなせたかしさんなどさまざまな作家さんが愛したお菓子を紹介する本。京都の老舗の和菓子から「ガリガリ君」のようなスーパーで買えるお菓子まで幅広く掲載されているのですが、一人ひとりが物語をつくる人たちだけあって、自分がそれをどう好きなのか、どう食べているのか、どういう記憶が潜んでいるのか、お菓子に物語を見出して伝えてくれています。読む側も興味をそそられるし、「私も身近にあるお菓子を紹介したい」という気持ちが湧いてきます。作家やタレントではなくても好きなものを人に伝えることはできるし、物語とともにお土産を渡されるのはうれしいことですよね。その参考になる本だと思います。
イラストレーター・杉浦さやかさんが貰ったものや贈ったものをかわいいイラストで綴った『うれしいおくりもの』もおすすめです。モノそのものも素敵ですが、リボンを掛けたり手づくりカードを添えたり、ひと手間加えて贈っているところがいいな、と思いました。私もよくお土産を旅先の地図や新聞紙で包んで渡しているのですが、贈った相手から「ここに行ってみたくなったよ」と言われることがあります。お土産って、自分が行ったまちの魅力を伝えるツールでもあるんですよね。道の駅にある“ふつう”の商品も、ラッピングを工夫すればより楽しいお土産になるのではないでしょうか。