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文筆家|甲斐みのりさんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊

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「いわゆる銘菓も好きだけど、野菜や調味料など、そのまちの日常のものも好きなんです」。旅やまちを楽しむエッセイを書きながら、近年では自治体のパンフレットやお土産物売り場の監修もしている甲斐みのりさん。その視点を教えてもらいました。

甲斐みのりさんが選ぶ、道の駅をつくる本5冊

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(左上から時計回りに)1.『町のけんきゅう』/2.『作家のお菓子』/3.『うれしいおくりもの』/4.『雲のうえ 一号から五号』/5.『向田邦子 暮しの愉しみ』 
 旅に出ると必ず道の駅に立ち寄り、食材やお母さんたちの手づくり品をお土産として買っていきます。宝探しをするような楽しさがあるし、そこからまちの魅力が見えてくるからです。そこで今回は、旅やまちを楽しむ視点、道の駅にあるものから物語を見出す視点を養ってくれる本を選びました。

 1冊目は、『町のけんきゅう』。この本では、商店街のショーケースやそこに陳列されているメニュー、お店の人の服装やまちを歩くおばあちゃんの靴など、何げない日常を観察して楽しみ、それをおすそ分けするように紹介しています。昔は「まちを楽しむ」といえば誰もが知る観光名所を巡ることであり、お土産には誰もが知るその土地の名物を選ぶことが多かったと思います。でも、いまは自分が好きだと思ったものを自由にお土産にしていいし、それが楽しい時代になりました。そのときに大事なのは、あらゆるものをおもしろがる姿勢ではないでしょうか。この本のようにまちを眺めて歩けば、そうした感覚が豊かになるはずです。

『作家のお菓子』は、谷崎潤一郎さんややなせたかしさんなどさまざまな作家さんが愛したお菓子を紹介する本。京都の老舗の和菓子から「ガリガリ君」のようなスーパーで買えるお菓子まで幅広く掲載されているのですが、一人ひとりが物語をつくる人たちだけあって、自分がそれをどう好きなのか、どう食べているのか、どういう記憶が潜んでいるのか、お菓子に物語を見出して伝えてくれています。読む側も興味をそそられるし、「私も身近にあるお菓子を紹介したい」という気持ちが湧いてきます。作家やタレントではなくても好きなものを人に伝えることはできるし、物語とともにお土産を渡されるのはうれしいことですよね。その参考になる本だと思います。

 イラストレーター・杉浦さやかさんが貰ったものや贈ったものをかわいいイラストで綴った『うれしいおくりもの』もおすすめです。モノそのものも素敵ですが、リボンを掛けたり手づくりカードを添えたり、ひと手間加えて贈っているところがいいな、と思いました。私もよくお土産を旅先の地図や新聞紙で包んで渡しているのですが、贈った相手から「ここに行ってみたくなったよ」と言われることがあります。お土産って、自分が行ったまちの魅力を伝えるツールでもあるんですよね。道の駅にある“ふつう”の商品も、ラッピングを工夫すればより楽しいお土産になるのではないでしょうか。

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かい・みのり●文筆家。静岡県生まれ。旅、散歩、お菓子、パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌、Webなどに執筆。著書多数。和歌山県田辺市、静岡県富士宮市などの地方自治体の観光案内冊子も手がける。
photographs by Yuichi Maruya text by Emiko Hida
記事は雑誌ソトコト2021年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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