みなさんは、普段どのような視点で「物」を選び、購入していますか? 「ててて商談会」の開催や伝統工芸・地域産業のプロデュースを行う永田宙郷さんがセレクトした本には、「物を見る力」を養うヒントが詰まっていました。
また20代から30代前半は、ポジティブにもネガティブにも「違和感」を感じる力を養える期間だと思っています。違和感は、その人の価値観を形づくるのに欠かせないものです。そこで今回は先人たちが、さまざまな物や事柄のどういうところに着目し、美しさや違和感を感じていたのかが分かる本を選びました。『美しいもの』では、美への審美眼の厳しさで知られる白洲正子さんが、どんなふうに目を整えて自分の中の美と向かい合っていたのか、その一隅を感じ取れます。「審美眼がある」といわれる人は、多くのものに見て触れて、比較することで自分なりの美や心地よさを身につけていくものだと思います。
『ふつう』は、「普通」について多角的に考察するプロダクトデザイナーの深澤直人さんの”頭の中が覗ける“本です。自分の感覚を磨くための問いや答えは、特別な物ではなく、日常の中からも見いだせることに気づけると思います。
それにしても、「審美眼」「目利き」「選定眼」と、物選びに関連する言葉には、「目」「眼」といった言葉がよく使われています。確かに視覚から得られる情報は多いのですが、それがすべてではありません。大きさや重さ、風合いなど手、耳、肌で感じ取って初めて分かる勝手のよさは必ずあるものです。また、「○△さんが選んだから」という情報だけに頼るのも注意が必要です。『食器の買い方選び方』は、そんな自分の身体と生活習慣や文化で物を選ぶ大切さを教えてくれます。それは食器に限らず、暮らしのなかでの自分の心地よさ、美しさの見つけ方にもつながっているのです。そう考えると審美眼というものは、まずは自分の身体のサイズや五感の具合を知ることから始まるのかもしれません。
深澤直人著、D&DEPARTMENT PROJECT刊
三品輝起著、夏葉社刊
サントリー美術館刊
美術品や仏像をはじめ、白洲正子さんが感じた「美しさ」をまとめたエッセイ。白洲さんが美しいと思ったものについて、なぜそう感じたのか、をていねいにひもとき、押し付けがましくなく説明してくれます。
食器の買い方選び方/秋岡芳夫著、新潮社刊
「身体にしっくりくるサイズとは?」「生活の基本を整えるものとは?」。日本のものづくりのために尽力した秋岡芳夫さんが、工業デザイナーならではの視点で情報と目に頼りすぎない物選びの方法を書いた本です。