新潟県新潟市で果樹農家として活躍する二人のアグリローカルヒーローを紹介。市内南区白根でアボカドをハウス栽培する『せきね農園』の関根邦仁さんと、世界一重いプラムの栽培に挑戦する『とみやま農園』の富山喜幸さん。それぞれに、果樹栽培の楽しさとやりがい、地域の未来への思いを尋ねました!
国産がほとんどない、アボカド栽培に挑戦!
メキシコ原産の熱帯果樹のアボカドを、雪国・新潟で栽培している『せきね農園』の関根邦仁さん。なぜ新潟でアボカドを育てようと思ったのか?
「僕が就農したのは31歳。同世代の農家仲間と10年ほどのブランクがありました。同じ道を追いかけても追いつけないから、誰もやっていない果樹を栽培しようと考え、探した結果がアボカドでした。調べると、国産がほとんどなく、長期間収穫でき、需要の多い果樹だったので」と関根さんは言う。
数少ない国内のアボカド農家を訪ね、地元の果樹農家や花農家の栽培方法を応用し、ほぼ独学でアボカド栽培を実現した関根さん。「就農したての頃は正直、農業は好きではありませんでしたが、アボカドと出合ってからは自ら勉強するようになり、農業がおもしろくなりました」。初年度は育苗用ハウスで管理し、翌年にアボカド専用の先進的なハウスを建て、取り寄せた苗木を40品種以上も育てた。
2、3年すると立派な実が生った。
「雪国アボカド」と名づけ、自身で作成したウェブサイトで販売を始めた。すると、販売開始1分も経たずに売り切れるほどの人気商品となり、飲食店や企業からも問い合わせが入るようになった。「検索をしたらすぐに『雪国アボカド』に辿り着けるように工夫しました。予約販売を行ったら、おそらく何か月待ちとなり、すぐに買えないお客さんはアボカドへの興味をなくしてしまうと思ったので、抽選販売にしました。すると定期的にサイトに訪れてもらえるので、ページビューが上がり、『雪国アボカド』が検索画面の上位に来ます」と、インターネットの性質を生かした巧みな戦略でファンを獲得している。「まだまだ収穫量は少ないですが、雪国アボカドが有名になることで、ここ南区白根がおいしい果実の産地であることが全国に知られたらうれしいです」と、地域の果樹農家の仲間とともに成長していく未来を描く。
ギネス記録挑戦によって得られた、技術と人のつながり。
同じく市内南区白根で新規就農して10年が経つ富山喜幸さん。県内の農林高校、農業大学校に進学した「農業一直線」の果樹農家だ。自身が経営する『とみやま農園』ではブドウとプラムを栽培しているが、プラムは1個の重さでギネス世界記録に挑戦中。加入している『JA新潟みらい』の協賛を得ながら、過去3回ギネスに挑戦したが、323.77グラムの記録を塗り替えられないでいる。「悔しいです。記録に届かず、泣いた年もありました。ただ、ギネスに挑戦することで、農業人として大きく成長させてもらっています」と富山さんは話す。「重いプラムをつくることは、必然的に旨みのあるプラムづくりにつながります。ギネス記録に挑戦することで見いだされた栽培方法や課題があり、それをクリアすることで、商品としてもおいしいプラムがつくれるようになりました。もし1回目で記録が出てしまっていたら、プラム農家としての成長はなかったかもしれません」と富山さん。多くの人から受けた温かい応援も貴重な財産になった。「来年も挑戦したい」と意気込む。
プラムづくりは群馬のプラム農家から、片道3時間の道のりを月に1、2回通って学んだ。ブドウ栽培は白根の先輩農家の農園でアルバイトをしながら学んだ。就農1年目に収穫したブドウを新潟市内で「白根産」と書いて販売したら、「白根のものなら間違いない」と言って購入する人が大勢いたそうだ。「白根という地域のブランド力によって、僕たち新規就農者はずいぶん助けられました。そんな地域のブランド力を未来まで維持できるよう、同世代の若手農家とともに新しいことに挑戦しながら、産地を引っ張っていきたいです」と、力強く語った。
まさに、地域の農業を盛り上げるアグリローカルヒーローの二人。未来に向けた活躍に期待したい。