千葉県南房総にあるわが家は、茅葺屋根にトタンを被せた築100年以上の古民家だ。2017年の台風21号で屋根が飛ばされ、北側一面の茅葺きがあらわになったことがある。そのとき北側から見たわが家は見事な茅葺屋根の家だったが、これを維持することはできないので屋根全体のトタンを新しく葺き替えた。その翌年、台風24号でまた北側一面の屋根が飛ばされ、北面だけ再び茅葺屋根の家に逆戻り。三度目は絶対に味わいたくない2度の実体験と、そのとき感じたことを紹介する。
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屋根葺き替えの予算は100万円。一番高いのは人工代
災害は突然やってくる
とにかくすごい風で、トタンがガタガタ音を立て、風の音と物音が聞こえ続けた夜。ものすごく大きな物音が、ひじき(ヤギ)小屋の方から聞こえてきたので、夜が明けてからすぐひじき小屋へと向かった。そこで目に飛び込んできたのは、何やら大きな物体と何かを訴えるひじきの姿。
家の裏側に回ってみたら、屋根の茅葺きが丸見えになっている! そして、隣の敷地内に屋根の残骸が。
地域の力は何よりすごい
「すみません! 屋根が飛んでしまったんですけど、こういうときどうしたらいいんでしょう?」
消防の人は、現状確認をしてから区長に電話を入れ、その後すぐに区長が駆けつけてくれた。区長が現状写真を撮ってすぐに役場へ報告してくれたおかげで、罹災証明書の発行など、書類手続きをスムーズにすすめることができた。
茅葺き屋根にトタンを被せるときに、屋根の頂上にある茅は取り除かれているので、土間から天井を見上げたら空が見えた。
屋根の葺き替えをする予定だったから、すぐに対応をしてもらえた点はラッキーだ。飛ばされた屋根が隣家を破壊することもなく、人に怪我を負わせることもなかったのは、不幸中の幸いである。
12月、無事に屋根の葺き替えが終わり、錆び錆び屋根から美しい屋根へと変身した。
一年も経たずに、再び茅葺き屋根が姿を現す
前回同様、北側の屋根一面が下地材ごと飛ばされて茅葺き屋根が姿を現していた。
屋根が飛ばされたとき必要なのは保険? それとも……
保険は必要かといわれれば、必要だと思う。信頼できる保険屋さんを地域の人に紹介してもらい、加入したくらいだ。でも、保険だけではやはり不十分だとも思う。災害があったときにすぐ動けるのは、やはり近くに住んでいる地域の人たちだ。「お宅の屋根がうちに飛んできたぞ!」と文句を言われない関係性を築いておくことも大切にしておきたい。
ふだんは面倒だと思うこともある、地域の共同作業や役員としての仕事があるが、毎日の小さな積み重ねが災害時は大きな助けにつながるのかもしれない。令和元年房総半島台風では、近所でも屋根が飛ばされたり倒木で道が塞がれたり、断水や9日間の停電を経験した。そのとき活躍したのもやはり地域の防災組織であり、地域の人たちだったのだから。
2023年6月6日、『ウェザーニュース』は今年の台風傾向について発表し、今シーズンの台風は平年よりもやや多い29個前後と予想されている。今のうちから、日々できることを積み重ねておきたい。
ライター。身近な面白い場所や人を取材するのが好き。築100年以上の古民家で、犬猫ヤギとともに田舎暮らしを堪能中。自転車キャンプ、犬連れ車中泊しながら自然を満喫するのが好き。
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