連載 | 犬猫ヤギと古民家と私。~From 安房暮らし Our life ~ | 11
里山に残る古民家DIYの知恵。「焼杉」と「よろい張り」でつくる強い家
土壁が崩れ、竹小舞が見えていたわが家の外壁。台風で屋根が飛ばされたのは災難だったが、「屋根改修時の足場があるうちに外壁作業をしよう!」ということで、材料費が安く、防虫防腐効果もある「焼杉」にDIY仲間の指導のもと挑戦することにした。
目次
家の外壁に使う「焼杉」とは
「焼杉」は昔から日本の外壁に使われていて、杉板を焼いて表面を炭化させたもの。炭化させることで腐食を防ぎ、防虫効果もあるといわれている。何よりうれしいのが、比較的安価な杉板を使って、自分でつくることができること。しかも耐久性が高く、50年~100年もっている建物もあるという。先立つ物がない私にとって、コストパフォーマンスの高い焼杉に勝る選択肢はないのである。しかも、自然素材というのもうれしい。
焼杉をつくって張っていく作業には人手が必要なので、DIY仲間に声をかける。崩れた土壁の上から構造用合板を張って準備し、杉板も仲間の材木屋さんにオーダー済み。あとは当日を迎えるのみだ。
焼杉の作り方と、コツ
3枚の杉板を三角柱に組み、立てて下から着火。煙突のように細長い空間で、下から上へと空気が流れるのを利用した「煙突効果」で杉板を焼きたいのだが、なかなか火がつかなかったり、勢いよく燃えなかったり。板に吸収された水分が原因なので、一旦すべての杉板を並べて湿気を飛ばすことにした。杉板をよく乾燥させておくことが、上手に焼くための大切なポイントとなるのだ。
杉板を三角に組むとき、ウマ(作業台)に端材を打ち付けて簡単な枠をつくっておくと作業しやすい。三角柱に組んだ杉板を、不要な電気コードで数か所ネジって固定。電気コードがない場合は、濡れたロープなどを使うといいだろう。
脚立に三角柱を安定して立てかけられるよう、上部に端材の棒を取り付けておき、脚立の下段には板を置いてブロックなどを乗せて重りにしておく。
丸めた新聞紙を下から入れて着火するが、うまく燃えない場合は少量の灯油を塗っておくのも一つの手だ。燃え具合が甘いときは、三角柱の板の間に鎌などの刃を差しこんで空気を入れるとよく燃える。炎が上がってから数分、頃合いを見て水場に運び、三角柱を開いて水をかけ、焼いた面同士を内側にして重ねておく。これの繰り返しで、どんどん焼杉をつくるのだ。
焼杉の「よろい張り」
縦胴縁の取り付け
構造用合板を張っていた北面の壁に、防水透湿シートをタッカーで張っていく。防水透湿シートの上から、焼杉を打ち付けるための下地材として「縦胴縁(たてどうぶち)」を等間隔に付けてから、いよいよ焼杉を張っていく。
焼杉のよろい張り
「よろい張り」は、板を少し重ねて張ることで隙間風の侵入を防ぎ、雨水が下へ下へと流れ落ちる。昔から外壁に使われている、日本の伝統的な張り方なのだ。
子どもから大人まで、何棟も小屋を建てているDIYマスターや本職の大工など、頼りになる仲間が子どもから大人まで総勢14人集まって一日作業をしたが、予定していた一面の外壁を張り終えることができなかった。残った作業は、翌日も来てくれた仲間たちのおかげで無事に完成。焼杉の仕上がりには多少のバラつきがあるが、自分たちでつくったという達成感は格別である。
足場があるおかげでスムーズに、安全に作業を進めることができた。台風で2回屋根が飛ばされたわが家では、屋根の改修で足場を設置する度に外壁の修繕作業を進めている。そのとき大切にしているのは、古材や廃材を生かすこと。お金はないから、足場でも何でもあるものをうまく活用してつくるしかないのだ。そしてそれが、DIYの楽しいところでもある。
本日の安房ファミリー
既に他界した子もいるが、わが家で暮らす動物たちの写真を毎回おまけとして紹介しようと思う。今回は、焼杉作業を行ったころのヤギのひじきと犬のあわ。
犬のあわとヤギのひじき
写真・文:鍋田ゆかり
ライター。身近な面白い場所や人を取材するのが好き。築100年以上の古民家で、犬猫ヤギとともに田舎暮らしを堪能中。自転車キャンプ、犬連れ車中泊しながら自然を満喫するのが好き。
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