ローカルグッド、ソーシャルグッドな活動をそれぞれの形で楽しみながら行い、ワクワクする未来を想起させてくれるU30の皆さんを紹介。
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「海の生き物×IT」の力で 海の価値を世の中に広めたい。
東京大学在学中に起業を志したものの、何をテーマにするかに悩んだ時に高倉さんの頭に浮かんだこと。それは幼少期から好きだった、水槽で水生生物を飼育する「アクアリウム」と生き物のことだった。改めて調べていく中で、「サンゴ」のおもしろさに魅了された。そんな時にサンゴ飼育の達人と出会い、「彼の技術をAIに学ばせて海の生態系を再現できれば、生態研究のハードルを大きく下げられる」と確信。『イノカ』を立ち上げた。『イノカ』の活動の核となるのは、自社のIoTデバイスを用いて、生態系を任意の場所で水槽内に再現する「環境移送技術」だ。その技術を生かしながら教育事業(サンゴ礁ラボ)、受託研究、水槽をオフィスに送る事業を進めている。目指しているのは、海を見える化し、人々の関心を高め「人と自然が共生する世界」を実現すること。高倉さんの目の輝きがさらに増したのは、サンゴ礁ラボの参加者の話をした時だ。これまでに子どもの発案で、企業とのコラボイベントや、東大の研究者との海ブドウの飼育実験が行われたという。「一緒に楽しく学ぶ中で自分たちも気づかされることがあるし、将来の仲間を増やすことにもなる。自分たちだけでは研究を完成できないからこそ、取り組みを次世代につないでいきたいです」と語る高倉さんの視線は、常に地球の未来に向けられている。
サンゴ礁ラボ
本物のサンゴに触れ、楽しみながら海や生き物のおもしろさや可能性、環境問題の深刻さを感じられる、エンターテインメント要素が高い環境教育プログラム。全国の商業施設やオフィス、学校で開催され、立ち上げから2年で2000人以上の子どもが参加している。
サンゴ産卵
2022年2月に『イノカ』は、自然環境を再現した自社の水槽内で育てたサンゴを、自然界とは異なる時期に産卵させることに成功。これによりサンゴの産卵時期を自在にコントロールできる可能性が見込まれており、サンゴ研究や保全への貢献が期待されている。
text by Miho Soga & Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。