地域からの情報発信に不可欠なウェブサイト。数多くのウェブサイトのディレクションを手がけ、ふさわしいデザインについて考え続ける重松佑さんが、ウェブサイトやデザインについて考えを深めた本を紹介します。
重松 佑さんが選ぶ、Web×ローカルデザインのアイデア本5冊
ウェブサイト制作の仕事では「このサイトで、ユーザーがどのような体験をするのかをデザインすることが大切」と言われます。スクリーン上のウェブブラウザという限られた環境のなかで、テキストや画像、色、ページ遷移など、小さなことを一つひとつ積み重ねてユーザー体験をつくっていきます。ですが、この制約がより想像力を発揮させると教えてくれたのが、風の彫刻家と呼ばれる新宮晋さんの仕掛け絵本『ちいさなふしぎな森』です。ページをめくるごとに、遠くにある森に入り、一本の樹に近づいていき、最後は森から出るという構成が、紙と本という非常に限られたインターフェースの中に、とても大きく豊かな世界を表現していて、制約の多いウェブデザインでも、確かな世界観を築くことができるだろうと、とても刺激を受けた本です。
同じように、ウェブサイト制作では当たり前だと思っていた考え方を覆してくれたのが、『Planting: A Ne
w Perspective』。オランダのガーデンデザイナー、Piet Oudolfが手がけたランドスケープの写真集です。彼の庭づくりは、宿根草を中心としているのが特徴で、植物を植えた時点では未完成で、数年、あるいは十数年後に思い描いた庭が出来上がります。未来という時間軸を入れる庭の設計(=デザイン)はとても新鮮でした。今のウェブサイトは、数年でリニューアルすることが多いのですが、彼の庭のように、未来の姿を思い描きながらもメンテナンスしながら長く使うことを考えたウェブサイトがあってもいいと感じました。
この2冊はデザインへの態度を考えさせてくれる本ですが、『サイレント・ニーズ』は、クライアントと仕事をする際に、相手のことを理解するためのヒアリングの心構えやノウハウについて学んだ本です。また具体的なデザインスキルについて書かれた『インタフェースデザインの心理学』『Webサイト設計のためのデザイン&プランニング』は、今でも読み返すことがあります。