「いつもガチャガチャのことを考えています」という小野尾さん。企業や自治体に対してコンサルティングを行うのが主な業務で、キャッシュレスなど新しい形態の導入も積極的に勧めている。魅力的な景品を世に出す発想法は、ローカルデザインにも共通する。
小野尾勝彦さんが選ぶ、ガチャガチャ×ローカルデザインのアイデア本5冊
ガチャガチャはSNSとの親和性が高く、おもしろい玩具を出せばネットニュースが取り上げて拡散されますし、ユーザーも投稿してくれます。ローカルをテーマにしたガチャガチャも同じで、出身地でもある船橋市の老舗のお店を景品にした「街ガチャ」もヒットしました。
では「おもしろい玩具」はどのようにしてできるのか。今回紹介する本は、そのための発想法を探る内容のものです。『「ない仕事」の作り方』は、自分や自分のやっていることをブランディングして、どう売り込んでいくかを教えてくれる本ですが、ガチャガチャにも通じます。いい意味でくだらない玩具が多い中で、SNSも活用してどう発信していくか。ガチャガチャは広い売り場も必要なく、比較的ブランディングの敷居が低くて応用もしやすいです。
乙幡啓子さんは尊敬する造形作家の一人。福島県の民芸品「ベコ」をいろんな空想上の動物と掛け合わせた「神獣ベコ」シリーズなどが有名ですね。彼女の創作の優れたところは決して実用的ではないところ。人生に必要はないけれどクスッと笑える、そういうものがガチャガチャにも必要だと思っています。
『超玩具発想法』は、ガチャガチャ界の雄である玩具メーカー『ザリガニワークス』の方たちが、どうやったらおもしろい玩具ができるのかをひたすら語り合う本です。ここの玩具は、たとえば箱にボタンがついていて、押すと音が鳴る「自爆ボタン」などとにかくユルいんですが、こういうことを日々考える人たちがいることが素晴らしいと思わせてくれます(笑)。
「コップのフチ子」は、ガチャガチャが20~30代の女性に受け入れられるようになったきっかけのような玩具です。SNSとの親和性が高いのもこのあたりからわかってきましたね。この会社の社長さんも自分と同じように大手企業を辞めて独立したのですが、『コップのフチ子のつくり方』に書かれている「ガチャとはこういうもの」という信念を貫くためにはそうしなければならなかったのが、僕にも理解できます。
『ガチャポンのアイディアノート』は、現場の人たちをていねいに取材した本。僕もガチャガチャの歴史などを語りました。つくり手とは違う第三者目線で書かれた本で、ガチャガチャ界の全体像がつかめます。