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サスティナビリティ

特集 | 人が集まるプレイスメイキング術

三友奈々さんが選ぶ「プランニング×プレイスメイキングを楽しむ本5冊」

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プレイスメイキングの研究者として、「誰もが無料で利用でき、個々が心地よく過ごせる、人に寄り添う居場所づくり」に携わる三友奈々さん。そんな居場所を身近につくりたいと考えたときに何を心がけるべきか、プレイスメイキングの理解を促してくれる5冊を選んでもらいました。

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(左から)1. コンパクト建築設計資料集成 [都市再生]/ 2. オープンスペースを魅力的にする ─親しまれる公共空間のためのハンドブック
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(左から)3. 復刻版 日本の広場 / 4. 丸の内仲通り ─“憧れの街”を支えるストリートの秘密 / 5. The Social Life of Small Urban Spaces
プレイスメイキングという概念は、当初、アメリカを中心に提唱されました。1975年創立の非営利組織『Project for Public Spaces(以下、PPS)』が当時、麻薬の取引の場になったりと、荒廃していたニューヨーク市マンハッタンの「ブライアントパーク」の再生計画に関わり、プレイスメイキングを実践し、ニューヨーカーのサードプレイスとして再生したことが、普及していったきっかけでしょう。基本的な考え方としては、「誰もが自由に利用でき、個々が思い思いにその場で過ごす場を自ら設える」、街中の居場所づくりです。

しかし、日本でこの概念が広がった際に「賑わいをつくる」ことだけだと理解する人が多くなりました。とはいえ、これが誤解だというわけではありません。本来、プレイスメイキングとはそれぞれの場所や、そこにいる人によって異なり、基本にしたい考え方はあっても、「これが正解」という定義はないのです。

『オープンスペースを魅力的にする』は、前述した『PPS』から生まれた住民と計画者、マネジメント主体のためのガイドで、プレイスメイキングを実践したい人にまず最初に読んでほしい本です。この本にはアメリカの街のさまざまな場所に市民や就業者の憩いの場を生み出すことを目的に、観察結果による考察や実践手法が紹介されており、プレイスメイキングの原点が集約されていると言えます。特に「小さなことから始める」「予算は大きな問題ではない」「ビジョンをつくる」「居場所づくりに終わりはない」などの「プレイスメイキングの11の原則」は今も不変で、参考になることばかりです。「ブライアントパーク」の例も載っています。

『都市再生』は、空間から居場所を考えるのに必読の書。どんな理想があっても、都市か地方か、周辺の環境などの条件でうまく成立しないことがあります。『都市再生』には具体的な空間の図面やそこに至った考察が豊富に掲載されているので、この本を見ながら、どんな場に再生したいか具体的・現実的に想像しながら描き起こしてみてはいかがでしょうか。簡単な図面でも、描いてみてわかることは多いです。空間の捉え方、考え方の幅も広がります。

居心地のいい場とは「過ごせる場」ではなく、「過ごしたいと思える場」のこと。たくさんの事例が収録されているこの5冊は、そんな場を求めている方のヒントになると思います。

みとも・なな●日本大学理工学部助教。専門は環境デザイン学。公共空間における利用者の観察調査や社会実験を通し、プレイスメイキングの研究、実践を行っている。主な研究対象地は「ブライアントパーク」や「丸の内仲通り」、「つくば公園通り」など。
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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