プレイスメイキングの研究者として、「誰もが無料で利用でき、個々が心地よく過ごせる、人に寄り添う居場所づくり」に携わる三友奈々さん。そんな居場所を身近につくりたいと考えたときに何を心がけるべきか、プレイスメイキングの理解を促してくれる5冊を選んでもらいました。
しかし、日本でこの概念が広がった際に「賑わいをつくる」ことだけだと理解する人が多くなりました。とはいえ、これが誤解だというわけではありません。本来、プレイスメイキングとはそれぞれの場所や、そこにいる人によって異なり、基本にしたい考え方はあっても、「これが正解」という定義はないのです。
『オープンスペースを魅力的にする』は、前述した『PPS』から生まれた住民と計画者、マネジメント主体のためのガイドで、プレイスメイキングを実践したい人にまず最初に読んでほしい本です。この本にはアメリカの街のさまざまな場所に市民や就業者の憩いの場を生み出すことを目的に、観察結果による考察や実践手法が紹介されており、プレイスメイキングの原点が集約されていると言えます。特に「小さなことから始める」「予算は大きな問題ではない」「ビジョンをつくる」「居場所づくりに終わりはない」などの「プレイスメイキングの11の原則」は今も不変で、参考になることばかりです。「ブライアントパーク」の例も載っています。
『都市再生』は、空間から居場所を考えるのに必読の書。どんな理想があっても、都市か地方か、周辺の環境などの条件でうまく成立しないことがあります。『都市再生』には具体的な空間の図面やそこに至った考察が豊富に掲載されているので、この本を見ながら、どんな場に再生したいか具体的・現実的に想像しながら描き起こしてみてはいかがでしょうか。簡単な図面でも、描いてみてわかることは多いです。空間の捉え方、考え方の幅も広がります。
居心地のいい場とは「過ごせる場」ではなく、「過ごしたいと思える場」のこと。たくさんの事例が収録されているこの5冊は、そんな場を求めている方のヒントになると思います。