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サスティナビリティ

連載 | SUSTAINABLE DESIGN

路地とコンテナと町家の驚くべき出合い。

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 なじみのある建物の解体現場に遭遇し、「え、壊しちゃうの?」と驚いた経験は誰しもあるだろう。日本のどこかで、毎日のように街角が壊されている。しかし一方で、建物を壊さざるを得ない側の事情も深刻だ。個人で風景を保ち続けることは大変に困難なことだ。残すべきか、建て替えるべきか。建て替えるのはある意味簡単で、もし仮に、建物を残したいと思った時には、法律の壁、使い勝手の壁、経済性の壁、続々と難題が出現してくる。街の風景を残したいと思う人々は増えてきているが、そのためには今までとは違う、知恵と技術を備え持つ必要がある。

 今回紹介するのは、町家がどんどん壊されている京都で試みられた、全く新しい取り組みだ。通りから一本入った老朽化した町家の上空に鉄骨フレームの床と大屋根を架けて、そこに物流コンテナを並べ、全体を一つの建築として再生しようという方法をとっている。訪れてみると、風景の異形さに驚く。町家と倉庫と物流コンテナが混在した不思議な路地を踏み進んでいくと、身体は違和感をそれほどは感じていないことに気づく。スケール感としてはまさに町家であり、京都の路地なのだ。設計したのは、京都の町家再生に数多く関わってきた建築家の魚谷繁礼氏である。着実に法律論と技術論を京都市と積み上げてきた魚谷氏ならではの、独創的なアイデアによって、事業の経済性もきちんと担保されているのが素晴らしい。

CONCON

 京都というよりも、タイ・バンコクの下町にいるような、この場所に生きる人のエネルギーが伝わってくる建築である。壊されるはずだった町家が残されるだけでなく、町家や路地が街をつくっていく“新言語”になっているようにも感じられ、とてもワクワクする。こうした試みが増えていくことを期待したい。

『共創自治区CONCON』

住所:京都府京都市中京区式阿弥町130
施工年:2019年

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