「Abuild就活」というキャリア構築サービスをご存知だろうか? 「Abuild」は「ability」と「build」を組み合わせた造語で、「能力を築く」という意味だ。就活における能力とは、「内定を獲得する力」と思うかもしれないが、「Abuild就活」はそれだけにとどまらない。いったい、どんな能力を築く就活なのか? サービスを提供する『NINJAPAN』代表の新井翔太さんに伺った。
「とりあえず内定を」の 思考が変わる「Abuild就活」
提供するのは、『NINJAPAN』代表の新井翔太さんだ。受講する就活生に対して、「将来、日本を引っ張るような人財になってほしい」と願う。サービスの内容は後で説明するので、「Abuild就活」が生まれるきっかけとなった新井さんの京都大学に通う学生時代にあった2つの出来事を紹介しよう。
「1か月間で約2500キロメートル、野宿をしながら走りました。自分の人生やキャリアを考えるうえでも大きな経験になりました」と新井さんは振り返る。当時から新井さんは、資源がないといわれる日本の将来を案じていたが、自転車で走りながら、「資源、あるやん」と思ったそうだ。過疎集落にもアスファルトの道路は通り、森林資源も豊富にある。地方都市や農山漁村にも人は暮らし、素敵な笑顔で話しかけてくれる。
「資源がないのではなく、ある資源を活かせていないだけだと感じました。人も技術も貴重な資源。埋もれた資源を発掘し、ポテンシャルを最大化したい」と考えた。
もう1つは、京都大学の教養教育改革によって新井さんが属する総合人間学部の解体の話が持ち上がったことを機に、大学と学生の存在意義を問い直した『ゆとり京大生の大学論』を共同編集で出版したこと。
「『自由に学びなさい』と言われて好きなことに没頭した学生が、社会人になる手前で急にビジネスの論理や厳しさを知らされることになります。大学界の学業の論理と、ビジネス界の実業の論理は大きく断絶されていると実感しました。その断絶を抱えたまま就活に臨むから、『とりあえず内定を。人生を考えるのはその後で』という学生が多発してしまうのです。そうではなく、自分は何をやりたいのか、この会社で何を学べるのか、社会にどんな貢献ができるのかといった本質的で長期的な視点をもって、自分と企業、社会を深く見つめながら就活を行えば、学業と実業との断絶は埋められるはずだと考えたのです」。
大学院修了後、新井さんは外資系投資銀行に就職して、数兆円規模の案件を担当したり、人材の最適な配置を考えたりするなかで、企業が社員に求めるものは何か、自分が輝くためにはどう動けばいいのかなど、自分と企業の関係性を深堀りした。そんな新井さんの視線の先にある日本経済の未来の姿と、そこで活躍する若い人たちを応援したいという強い思いはやがて、「Abuild就活」というキャリア構築サービスに結実したのだ。
気になる「Abuild就活」。 その中身は?
「Abuild就活」の独自カリキュラムは、「ABUILD」というフレームワークに基づいてつくられている。
A(Arbitrage)は、就活の原理を知り、B(Bridge)は、企業視点を持つ。U(Uniqueness)は、自分の価値を見出し、I(Inclination)は、相手に合わせて届ける。L(Leverage)は、内定だけでなく豊かな人生のために、D(Do)は、やり抜こうという就活の本質を表したものだ。
「ABUILD」の6項目に関しては、新井さんが書かれた書籍『外資系投資まで完全攻略 最強の就活フレームワーク ABUILD』(PHPエディターズ刊)に詳述されているので、ぜひ読んでみてほしい。就活の本質である「ABUILD」の理解を深めることこそ就活を成功させ、豊かな人生を送るための力となるはずだ。
たとえば、マネジメント能力。タスクマネジメントとタイムマネジメントがあり、タスクマネジメントはまず、達成したいゴールを設定しながら、自分の現状を把握する。ゴールと現状に差があることを理解して、どういう戦略を立て、どういう戦術を用い、どんなふうに実行するかを考える。
もう一つがタイムマネジメントで、1か月ごとにこういうふうに進めばタスクを達成できる、ならば、1週間でこれぐらいは進みたい、さらに1日単位に落とし込むと月曜はこれを、火曜はこれをと、ときにバッファも設けつつ、設定したゴールに到達するまでのスケジュールを管理しながら、時間の有効な使い方、効率化や生産性の向上を目指す。タスクマネジメントやタイムマネジメントといった企業でも行われている仕事の管理や進め方を「Abuild就活」でも活用し、その能力を身につけるのだ。
「その力が身につけば、たとえば、社会人になって数年が経ち、再び自分のキャリアを考え直すことになったときにも役立つはずです。キャリアを考える素地は、『Abuild就活』を通して身についているので、キャリアに迷ったときでも自分を分析し、自分の意志で進むことができる人間になっているでしょうから」と新井さんは笑顔で答える。
そんな「Abuild就活」は、いつ始めるといいのだろうか。
「早いほうが自分や企業、社会をより深く見つめ直すことができ、入念な準備が可能になります。というのも……」と新井さんは、就活情勢の変化を指摘する。「インターンシップの重要性が高まっているからです。経団連に属する企業では、インターンシップと採用を結びつけることは禁止されていましたが、2023年から採用につなげてもいいというルールに変わりました。インターンシップを機に実質的な内定を獲得する学生もいます」と話す。
インターンシップの多くは夏休みに行われるので、「Abuild就活」を3年生の4月から始めるとまだ間に合う。内定だけではない、豊かな人生を獲得したい就活生は受講を考えてみてはいかがだろう。